ソーシャルセクターの法的支援を行うBLP-Networkの活動内容や展望とは
――活動内容を教えてください。
瀧口:支援先の状況により様々ですが、NPOの定款作成、契約書作成、危機管理、総会運営、著作権、個人情報についてなど、ビジネス法務のスキルを生かした多様なサポートを行っています。特に多いのは、契約書や規約類の作成、整理ですね。
梅津:これに加えて、私の場合は日本のNPOが海外の団体からライセンスを受ける際の英文契約書を見たり、海外展開を考えるNPOを支援したり。普段の業務も国際業務が多いため、そうした支援も多々行っています。
鬼澤:個々の支援に加え、プロボノ活動を行う外資系金融企業の法務部やコンサルティング企業などと協力し、NPOの方々向けの相談会や勉強会も開催しています。特に立ち上げ間もないNPOは法務面が手薄になりがちですが、弁護士がかかわることで、組織づくりはもちろん、対外的な信頼性の向上にも貢献できていると思います。
梅津:何らかの社会課題を解決したいという強い思いを抱いてNPOを立ち上げた人が多いものの、思いだけが先行することも少なくありません。いわば我々は〝用心棒〞。彼らが思いを実現できるよう、トラブルになる前に、軌道修正するといったイメージです。
――60期代の弁護士が率先して運営しているそうですね。
瀧口:大手企業とのコラボイベントなどはシニア世代が中心となって企画することが多いのですが、執行部は60期代が中心。今活躍している社会起業家、NPOの代表は、我々と同世代の方々も多いため、相談時に話しやすいのではないかと考えています。また、これから若手弁護士の参加が増えることなども想定し、若手中心の運営体制となっています。
梅津:BLPを知った時は、若手中心であることに驚きました。上の世代は、若手の相談に乗りながらも彼らをリスペクトしていて、感動を覚えました。〝縦横・上下〞ともに、議論も活動も非常に活発な会だと思います。
瀧口:メンバーの多くはNPOと元々つながりがあり、実態を知っているので、どんな法律問題が生じそうか想定できます。ただ、これからはプロボノやNPOに興味はあるが、まだどこともつながりがないという若手弁護士にもどんどん参加していただきたい。そのため、BLP内での知識共有の方法や、案件の受け方など、体制づくりを試行錯誤しているところです。
――BLPは社会の中で、どんな価値を発揮しているのでしょう。
鬼澤:ソーシャルセクターが増え、それにかかわる人たちが増えることは、「社会的な問題を、他人事ではなく自分で解決していこうという人が増える」ことになり、ひいては「よりよい世の中の実現」につながっていく。我々も、そんな社会づくりの一員でありたいと考えます。
瀧口:弁護士以外の様々な立場の方と共に「一つの社会課題の解決に向けて力を合わせよう」という動きが、この活動を通じて波及することを期待しています。
――BLPの活動の楽しみを教えてください。
鬼澤:〝同じ思いを持ってソーシャルセクターを支援しているビジネス法務の弁護士がつながることができる場〞をつくろうと、司法試験を受験した直後に数人の弁護士に働きかけて、この会を発足させました。当時はまだ弁護士ではなかったですし、そもそも弁護士になれるかどうかもわからなかったのに、です(笑)。ただ、飲み会を定期的に開催したり集まる場をつくったりすることは弁護士でない自分でもできると思い、BLPの設立を提案してみました。その根本には「これ楽しそう」「これをきっかけにいろんな弁護士と語り合える」「自分にはこれができる!」と、〝面白がる気持ち〞がまずありましたが、その〝面白がる気持ち〞に多くの弁護士が共感してくれた……ということで続けてきたのがBLPです。「ビジネス法務で社会課題の解決の支援を」という思いを持ち続け、そこでいろんな出会いや目的の達成を目の当たりにできることが喜びです。
梅津:〝思い〞があれば、自分の思う通りのびのびやれるのが弁護士の仕事。ただ私自身も然りですが、そのためにはスキルが必要。それが伴わないと社会の役には立てません。一所懸命自分を伸ばすという努力と、のびのびとやることのバランスを取ることが大事。それを続けていけばどこかで、願う機会や人との出会いが巡ってくる。そうして巡ってきたチャンスを捉えた先には、また違う新たな世界が広がっていきます。その繰り返しに喜びを感じています。
瀧口:自分が持つスキルを提供できる喜びもありますが、それ以上に、かかわった団体が社会に大きなインパクトを与え、特定の社会課題の解決に向けて一定の成果を示せた時に、大きなやりがいを感じます。
――弁護士が活躍できる〝新たな場〞を今後も広げてください。
瀧口:BLPのメンバーは、「どのスキルや法的知識が役に立つか」というよりも、「この社会課題の解決に自分も関与したい」という思いで動いています。つまり「弁護士ができることはこれ。この〝メニュー〞が当てはまるのはどこ?」という発想ではなく、問題意識や関心先行で多様な分野にまず飛び込み、結果的に自分たちで新たな弁護士の活躍の場を創出しているように思います。そんな発想・行動ができる弁護士が増えれば、弁護士の活躍できる領域はもっと拡大していくと思います。