法務最前線:2010年11月号 Vol.18

法務最前線

アトーニーズマガジン 法務最前線

経営そのものに深くかかわる企業法務部。現場からの相談に瞬時にかつ的確に判断することが求められる組織に必要なファクターとは、その精鋭が弁護士に期待することとは何か?各社の法務部長へ伺いました。

※掲載記事の内容は取材当時のものです。

新時代のWork Front

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ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 法務部

弁護士比率の高いジョンソン・エンド・ジョンソンの法務部。女性が多数活躍していることも特徴だ。米国本社法務部の弁護士が日本に一人もいなかった7年前、江田氏が組織作りに着手し今日の体制を築いた

仕事をする上でのイメージは5クライアントを持つ法律事務所

ジョンソン・エンド・ジョンソンの日本における事業は1961年にスタートし、コンシューマー・メディカル・ビジョンケアの3カンパニー制で分社分権化経営を行っている。各社の法務業務を統括する江田千重子氏に取材した。
「私たちはジョンソン・エンド・ジョンソンの3カンパニーと、グループ会社であるヤンセンファーマ、オーソ・クリニカル・ダイアグノスティックスを加えた5事業体に法務サービスを提供しています。法務組織は『法律重視のもと公正に業務を行う』方針からビジネスサイド(各事業体)と別ラインに置かれており、本社法務部門と直結していることが特徴。各事業体のサービスは日米の有資格者あるいは業界で長い経験を持つ者を中心に遂行しており『5クライアントを持つ社内法律事務所』に近いイメージだと思います」
日本の法務部の体制と特徴はどうなっているのだろうか。
「法務担当6名のうち5名が有資格者です。知財担当の弁理士が1名、そのほかスタッフ3名という陣容。有資格者比率が高いのは弁護士中心の米国本社と同レベルの仕事をするためで、合併・買収から知財関連まで本社と連携する業務が数多くあります。当然ながら英語によるコミュニケーションが必須。そして国内は、クライアント・カスタマーともに日本人で契約の大半が日本語。日米のバイリンガルであることが必要です。また日本独特の難しさが伴う業務もあります。例えば数年前の買収案件ではヘルスケア企業の消費者部門をグローバルレベルで買い、本社が締結した契約をベースに日本での統合を行いましたが、薬事承認や代理店変更などに日本独自の業界ルールや法律があるため、とても難度の高い仕事になりました」
そんな法務部はどのように各社にサービスを提供しているのだろうか。
「4年前にヘルスケアコンプライアンス部が設立され、日常的なコンプライアンスは法務の手を離れました。しかし米国の法律FCPA(※)への対応は担当しますし、5事業体の『ルール』にかかわることはすべてサポートします。ルーティンワークである契約関連業務のほか、消費者向け商品の広告表示、医療機器・医薬品の営業資料などのレビューがあります。また各社に対して医療機器・医薬品の公正競争など業界ルールに基づいたアドバイスを行い、大きな問題に発展しそうなクレーム対応をサポート。これらの業務は基本的に各事業体の担当者が主導しています。5事業体に共通する日本法の業務や、ジョンソン・エンド・ジョンソンの全世界ガイドライン『ヘルスケアコンプライアンス』などの適合チェックは、仕事量・複雑さに応じて業務を割り振りチームで処理します」

5クライアントとの関係と企業法務におけるスタンス

「米国のローファームで弁護士をしていた私は、7年前に日本の法務部立ち上げのため入社しました。初めて社内法務を体験して感じたのは、外と中では『アドバイスの使われ方』が違うことでした。私のアドバイス先は主に社長や事業部長ですが、それが現場に伝わる間に時として違う解釈になっていたりする。同時に『アドバイスに対する責任』のとらえ方の違いも痛感しました。社内法務は十分な情報がない時点でも未知のリスクを受け入れて、決断することが必要。さらにローファームは相談に対しての助言をして終わりですが、社内法務はアドバイスが正しく確実に遂行されるまでの責任があります。ですから拡大解釈や誤った適用判断がされないように注意し、同じことであっても何回も繰り返し言うようになりました。企業法務の難しさは『クライアントを変えられない』こと。ですから決まっている相手とうまくやる方法や、どういう話し方が相手に響くかも考えるようになりました。私たちの組織を『社内法律事務所』と表現しましたが、5事業体つまりクライアントとの関係はごく近く、当然ながらチームの一員という意識で仕事をしています。特に製品開発やライセンス売買などビジネスの初動にかかわる際はその思いが強いです。ビジネスがうまくいくためのサポートが私たちの役割。問題点を先取りして適切なアドバイスを行うように努めています」

ブランドを大切にし、継続的な事業を進める会社で働く喜び

「メンバー10名のうち7名が女性という法務部には、女性が働きやすい理由があります。幼稚園の送り迎えがある人はほかの人より少し早めに退社するなど、フレックスタイムなので融通が利きます。豊富な経験やスキルを持っていれば、時間などに制約があっても積極的に採用するのが私の方針。実力重視の視点はもちろん採用後にも向けられ、OJTプラス研修にも行ってもらいます。また年に一度米国で開催される法務部内のグローバルミーティングにメンバーを同行させ、各国弁護士との情報交換・共有も図っています。私たちの組織で働く魅力は、まず世界的に大きなビジネスに携われること。次にグループ各社に勤務する人間が会社・製品・顧客を愛していること。それがサポートのやりがいにつながるのです。米国本社には入社30年、35年という社員が多数在籍していて、その一点を見ても長期的な展望でビジネスをしている会社であることがわかります。そんな組織の一員であることも誇りです」 ※ 海外不正行為防止法などと訳される米国の法律。証券取引法に基づく会計の透明性を規定し外国公務員に対するわいろの禁止がうたわれている。

■企業概要

  • ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
  • 設立:1978年8月(創業1961年1月)
  • 資本金:40億円
  • 代表者:代表取締役社長 デイビッド・W・パウエル
  • 従業員数:2,037名(2009年12月現在)
  • ■プロフィール
  • 江田千重子(えだ・ちえこ)
  • ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
  • 法務部 日本代表
  • 米国ニューヨーク州・カリフォルニア州弁護士
  • 1985年 コロンビア・ロースクールJ.D.課程卒業
  • 米国ニューヨーク州弁護士資格取得
  • ミルバンク・ツイード・ハドリー&マックロイ法律事務所勤務
  • 1990年 米国カリフォルニア州弁護士資格取得
  • 1998年 ミルバンク・ツイード・ハドリー&マックロイ法律事務所退職
  • シャーマン・アンド・スターリング法律事務所勤務
  • 2003年 同所退職 ジョンソン・エンド・ジョンソン入社(現職)
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