Vol.23
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在宅勤務が100%可能なため、全員のメンバーが揃うことはまれ。都内4カ所にあった拠点をひとつに集約し、できたばかりの本社ビルをバックに

在宅勤務が100%可能なため、全員のメンバーが揃うことはまれ。都内4カ所にあった拠点をひとつに集約し、できたばかりの本社ビルをバックに

THE LEGAL DEPARTMENT

#18

日本ヒューレット・パッカード株式会社 法務・コンプライアンス統括本部

さまざまな業種から中途採用。事業を前に進める社内の「ビジネスパートナー」としての企業法務を標榜

外資系企業の法務の仕事

世界有数のIT企業ヒューレット・パッカード(以下HP)の日本法人ともなれば、社内に外国人がゾロゾロいて、英語が飛び交い、海外とのビジネスが頻繁に……と思いきや、「当社が主に担当しているのは日本のマーケットであり、お客さま。契約書が英文で交わされたりすることはまれです。グローバル企業だから海外グループとのコミュニケーションを取るうえで英語力は不可欠ですが、私たち法務の一番の仕事は、社内の〝意識合わせ〟なのですよ」と、井上修法務・コンプライアンス統括本部長は言う。

同社の法務部門は、営業などの実働部隊をサポートするビジネスリーガル本部と、企業活動の基盤にかかわるコンプライアンス本部からなり、井上氏直属の部下が両部門合わせて11名という陣容だ。

「私自身、商社を皮切りにいくつかの企業の法務部門を経験した中途入社組ですが、11名のうち新卒生え抜きは3名しかいません。それは単に即戦力を求めた結果で、大半は法務畑の出身。ただ、彼らが元いた会社は金融、メーカー、ベンチャー企業と、バラエティーに富んでいます」

即戦力が欲しいのなら、IT関連の専門職をターゲットにするのが常道では?

「専門知識があるに越したことはありません。でも、もっと大事なのは本人の姿勢、考え方です。その会社の事業を深く知ろうと努めれば、どこに行っても通用するはず。そうでなかったら、会社がドラスティックな新規事業に乗り出したとたん、みんな失業してしまう(笑)。どんな会社にも、その道のプロが揃っているのだから、素直に『教えてください』と言えば、喜んでレクチャーしてくれますよ」

ビジネスパートナーであるべき企業法務

では、井上氏が考える「あるべき企業法務」とは、どういうものか。

「書面で案件に対するコメントだけ述べて、『あとはそちらでご判断ください』というような法務部もあるでしょう。しかし、私はビジネスをやっている人と一緒になって、事業をああしようこうしようと考えながら、その過程で発生するリスクを洗い出し、解決策を提示する――そんなビジネスパートナーであるべきだと思っています。第一、そうでなければ企業法務の仕事は面白くない」

5年前、HP法務部に着任以来、そうした風土を根づかせるために、「クライアント、すなわち社内のビジネスパートナーの部署に足繁く通い、膝づめで話す」よう部員に徹底している。弁護士の仕事と企業法務のそれとの違いを、井上氏は「弁護士は〝依頼人からの仕事〟、我々は〝私の仕事〟」だと表現する。

「〝私の仕事〟だから、より当事者意識を持って案件にぶつかります。成功すれば喜びはひとしおだし、失敗したら痛さも半端ではない。それが企業法務の仕事の一番の醍醐味だと思っています」

仕事は、より「オーダーメイド」に

日本ヒューレット・パッカード株式会社 法務・コンプライアンス統括本部

実は、井上氏を含めた12名のうち米国の弁護士ライセンスを持つのが井上氏ともう一人だけ。日本の弁護士資格は誰も持っていない。

「弁護士の法律知識、交渉スキルといったものは、企業にとっては魅力的。日本では、すでに弁護士資格所有者が大量に生まれ、職探しに苦労する状況になっています。そうしたマーケット環境を考えても、企業法務部が有資格者を採用したいと考えるのは当然の流れだと思います」

日々進化を遂げるIT業界。今後、企業法務に求められる役割はどのように変化していくのだろうか。

「たとえば、ネット経由で広範なサービスを受けられる『クラウドコンピューティング』の時代が到来しています。でも、誰も『クラウド』の明確な定義を示してはいません。それどころか、お客さまごとに考えていることが違うのです。つまり何がやりたいのか、どこまでできるのかを案件ごとにオーダーメイドで事業に仕上げていく必要がある。だから我々企業法務の仕事も、オーダーメイドにならざるを得ないのです。ただそれは、法務として最もやりがいを感じ、バリューを発揮できる仕事でもあります。そんな期待に応えるためには、いっそう社内での〝膝づめ談判〟の機会を増やす必要があるし、法律の高い知識も求められることになる。HP法務スタッフの底力が試される、いい意味で面白い挑戦の時代が来たと、ワクワクしているところなんです」