同社法務部は山本裕幸部長以下18名の体制。知的財産、株主総会、内部統制関連などについては別に専門部署があり、主として訴訟、法的トラブルへの対応、M&Aなどの新規プロジェクトをはじめとする各種施策への法的支援、契約書等作成サポート、社内啓発といった業務に携わる。
案件には、必ず2人一組で対応するのが同部の決まりだ。山本氏は「メインの担当者に、経験の長いメンバーをサポートとして付けます。そうすることにより、案件対応の安定性が高まると同時に、人材育成にもつながるわけです」と狙いを語る。
業務に関しては特に明確な担当分けはせず、現場から依頼が来れば、その都度部員の仕事のバランスなどを考慮して割り振る。「せっかく多角的なビジネスを展開する会社にいるのですから、何かの領域に特化するより、いろんな分野を担当して、知見を広めてもらいたい」という考えもあってのことだ。ただ、そうした日常業務とは別に、各人には担当の事業部がある。
「法務としては、依頼を待っているだけではなく、こちらから事業部との距離を縮めていく姿勢が大事になります。中で抱える問題とか、求めている法的支援は、実は事業部によって様々。そこで部門ごとに担当者を決め、定期的に現場に入っていき、話を聞くことにしたのです。そうやってニーズを拾い上げることで、より適切なサポートが可能になるほか、現場でビジネス感覚を学べるというメリットがあります」
また、社内留学で米ニューヨーク州弁護士資格を取得した横尾大輔マネージャーは、「現場には法務は敷居が高い、という意識もあるので、逆にこちらから踏み込んでいくスタンスが大切なのです」と話す。
「例えば外資との英文契約は、普通は相手がつくった書類をチェックするというパターンなのですが、こちらで作成したほうが有利に交渉を進められる場合もあります。そんなケースで、法務に頼むのは気が引ける、という雰囲気を斟酌し、先んじて契約書を作成したら、担当者からもその上司からも非常に感謝されました。僕自身、ここまで貢献できるんだ、という大きな気づきとなりました」