ところで、エステーといえば、訴求力あるテレビCMが印象に残っている人も多いだろう。
「社風自体も、あのCMのイメージに近い」と座間氏は笑う。
「R&Dやマーケティング部門はチャレンジングで勢いがあります。我々法務は少しだけその対極にいて、リスクを冷静に説明する。いいバランスが保たれていると思っています」と話す。
「例えばマーケティング部門は商品に対し、過大な効果・効能の表現をついしたくなる。そんな場合は、無理な部分を指摘したうえで、どこまでなら可能なのかを一緒に考えていきます」
そうした法務機能の一層の強化に向けて、ここ1、2年取り組んでいるのが、「扱った案件のデータベース化」だ。
「相談を受けて対処したものについては、情報を蓄積して、グループメンバー全員が活用できる仕組みを構築しつつあります。もちろん、まったく同じ事例というのはないのですが、類似ケースに当たることで、『今回はここが違う』ということも正確に把握することができるのです」
この“見える化”を推進して以降、「回答のレベルアップや時間短縮という効果が、徐々に出始めている」そうだ。
他部門に法務の重要性を理解してもらうためにも、メンバーには、「とにかく積極的に現場に出かけよう」と話す。
「回答はメールで送って終わりではなく、なるべく持って行って説明する。直に話をすることで、現場の抱える潜在的な問題に気づくこともあるだろうし、何より法務がより身近な存在になれるはずです。おかげさまで、今は現場がプロジェクトの早い段階から、我々を頼ってくれるようになりました」
欲しい人材は、「ある程度の法律知識は当たり前。そのうえで、仕事の現場を理解する意欲、能力のある人」とのことだ。