1966年の創業以来、会計事務所とその関与先企業、および地方公共団体に専門特化したICTサービスを提供し続けている株式会社TKC。税法・会社法・民法・行政法などの法律と深くかかわりながら、1万名を超える税理士・公認会計士(組織化/「TKC全国会」)と、地方公務員の業務遂行を支援する。また、判例検索を含む法律情報データベースを法科大学院などに提供しているので、社名に馴染みが深い方も多いだろう。同社事業所は、システム開発研究所、データセンター、営業所などで、全国100カ所近くに設置されている。そのすべての法務を担当するのが、経営管理本部 総務部 法務担当課長の大友潤弁護士と、主任・池上英夫氏の2名だ。役割を大きく分ければ、営業拠点がある東京本社にて大友弁護士が法務全体を統括し、地方公共団体事業部とシステム開発研究所がある栃木本社にて、同事業部の専任かつ総務と重なる労務管理面を、池上氏が担当するという具合だ。
二人は法務担当が新設された2008年より、試行錯誤しながら、この体制を整えてきた。
「弊社でメインとなるシステムは、税務申告をするにあたっての会計システムや、法人税申告関連システム、企業内での利用となる様々な財務会計システム、そして自治体の基幹系システム(住民基本台帳・選挙・税務情報など)です。法務担当ができる前は契約に関する業務を総務部が行っており、営業部などから届く連絡につど対応していたので、大変だったろうと思います。法務業務で最も比重を占めるのが契約審査ですが、我々はまず〝契約審査におけるルール構築〞に着手しました。社員数も事業所数も、当然、契約数も多いので、迅速かつ確実に案件処理を遂行するためです。審査申請をメールに統一すること、〝審査依頼シート〞記入を徹底すること、それを元に我々が法的リスクを段階的に評価して、承認申請手続を踏むことと、ごく基本的な流れをつくりました」と、大友弁護士は語る。また、「新たなシステムが開発されるたび、取締役会の承認を得て〝標準契約書〞というものが作成されます。その際にも、法的側面からのアドバイスを行う」ということだ。
同社が提供するシステムやアプリケーションソフトは、基本的に〝ノンカスタマイズ〞。そのため、開発時のトラブルはほとんど発生しない。その代わり、利用をめぐるトラブルについては様々なものが想定されるため、契約前の審査(審査・調査・検討)を徹底することが、法務の重要な役割となっている。