実際、事業支援という観点で法務部が果たす役割は大きい。
「当社ではSSBR(溶液重合スチレンブタジエンゴム)という、エコタイヤの材料となる合成ゴムの事業に力を入れています。四日市工場がその製造拠点ですが、グローバル展開の一環で、タイおよびハンガリーの企業と合弁会社を設立しました。投資額は数百億円規模と当社にとってはビッグプロジェクトです。このプロジェクトに法務として私も参画。どのような運営体制・販売体制にするのか、技術導入のスキーム、契約スキームなど、ビジネスサイドと協力し、メインネゴシエーターとして契約交渉してまとめ上げました。今、すでに稼働開始したタイや建設中のハンガリーの工場が、当社事業の屋台骨となれば、嬉しい限りです。なお、この契約交渉には、法務部の若手も参加させ実地体験を積ませました。そうした重要プロジェクトを経験した若手がスキルアップし、やがて大きな案件に中心的に携わってくれることが楽しみです。望めばダイナミックな経験を積める――これが当社で働く醍醐味だと思っています」
土居氏が描く法務部の理想像は、次のようなものだ。
「法務部のミッションは〝当社グループ全体の利益の最大化を図るための事業支援〞と〝コンプライアンス〞。我々は単なるアドバイザーではなく事業推進の主体となることが求められますから、〝事業を知る法務であること〞が必須なのです。その観点から、事業部と法務部との人事ローテーションを、もっと進めたいと思っています。事業に詳しい人材が法務部にいることが事業支援の質の向上に資する、また逆に法的知識を持った人材が事業部にいることによりグループ全体のコンプライアンス向上につながると考えています。また、海外拠点との人材交流も行っていきたいですね。海外については、なかなか国内企業と同じようにサポートできないのが課題ですが、さらなるグローバル展開を見据えて、人材を育成していきたいと思います。数年ごとに1人ずつ、社費でロースクール留学に送り出しているのもそのためです。いずれも長期的な取り組みになりますが、理想の法務部をかたちづくるべく推進いたします」