法務最前線:2017年11月号 Vol.60

法務最前線

アトーニーズマガジン 法務最前線

経営そのものに深くかかわる企業法務部。現場からの相談に瞬時にかつ的確に判断することが求められる組織に必要なファクターとは、その精鋭が弁護士に期待することとは何か?各社の法務部長へ伺いました。

国際的な立法作業に関与し、経済を通じて 国家間の良好な関係づくりに寄与する

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外務省 国際法局 経済条約課

経済条約の法的な 解釈や締結を担う

常時25〜30名の陣容で構成される国際法局経済条約課。うち任期付職員として勤務する弁護士を含む法曹有資格者は現在5名。経済連携協定の交渉・締結で重要な役割を果たす彼らの仕事について、河津邦彦経済条約課長が答えてくれた。「経済条約の中で、経済連携協定(EPA)、投資協定及び租税条約の3つが、当課のフラッグシップ案件です」
各種条約の政策的な判断を行う省内の主管課や担当部局および関係省庁と協働して、その政策判断が法的に成り立つかを徹底的に検討する。具体的には、日本が他国と交渉を行う際に用いる対処方針について、事前に法的な論点を洗い出し、ルール化した時に現行の国内法で実施できるかを確認する。実施できないなら既存の国内法にどう手を加えたら可能になるかなどを検討する。交渉にも参加し、対処方針が適切に発動されているかを確認。交渉中に条文の文言修正が行われる場合には、現場で法的な問題を検討する。「そうして交渉の進展を支援します。交渉後は、国家間の誤解や紛争の芽を排除すべく合意内容が条文にきちんと反映されているかを確認・精査(リーガルスクラビング)。ここまでが条約締結に先立つ交渉に関する対応で、条約が完成すると、内閣法制局の審査・閣議決定・国会提出といった、条約の発効に必要な国内の一連のプロセスを主導します。条約の実施・運用段階で問題が生じた場合は解消を目指し、条文の意味するところを解釈・精査する――これらが当課の主な仕事です」
つまり経済条約課は、交渉のための準備、交渉への参加、締結、実施という一連の過程において法的観点から適切な助言を行う責務を負う。投資協定を例にとれば、エネルギー、金融、通信分野などの国内法令が絡み、新たなルールと既存法令との整合性の確認が必要となる。
同課が弁護士からの公募を始めたのは2003年だ。「以来、35名の法曹有資格者に任期付職員として勤務してもらいました。弁護士として培った知見、強みを生かしてもらうことはもちろんですが、『弁護士だから』『任期付だから』と業務範囲を制限することはいっさいなく、立場と責任は他の外務省員と同等です。基本的に、課員それぞれが省内の職員や他省庁の担当者と協働して業務を進めます。例えばTPPには30もの章があり、分野ごとに当課の担当が必要となりました」

国家間の関係向上に 経済を通じて寄与

今回お話を伺った5名がこの仕事に就いた理由は、「外務省の仕事に興味があった」「学生時代に国際政治・国際法を専攻していて関心があった」など、それぞれだ。ただ全員が、「国際的な立法作業に関与し、国家間の関係づくりに寄与できる」「一人ひとりに与えられる裁量が想像以上に大きい」「自ら判断したことが、国の政策や条約の文言に反映されていく実感」などのやりがいを感じている。
5名は順次、年末までの間に任期満了となり、次のステージへと進んでいく。例えば畠山佑介弁護士は「大手渉外法律事務所の海外オフィスでМ&Aやファイナンス案件に携わる予定。民間の立場から〝実施〞の部分を支えることを意識していきたい」と語る。全員、経済条約にかかわることで得た知見やノウハウなどを次に生かしたいという思いを持って新天地に向かう。〝国際約束〞に関するドキュメンテーション能力・解釈などの技術や、人脈を有する弁護士はまだ多くない。新しい活躍の場に挑戦する後進の参加を、彼らも強く望んでいる。「国と国の関係を長期的に設定する条約を形にする作業は、ダイナミックでやりがいのある仕事。そこには弁護士として実務で培ってきた専門知識や勘どころを発揮できる場面がたくさんあるはず。任期付ではあるものの、法曹界の方々が国際的な動向に関心を持って、その立法作業に携わっていくことは、日本社会全体にとってのメリットも大きいと感じます。創造的で、広い視野を育めるこの仕事に、関心を持つ方が増えることを願います」(河津氏)
(文中の肩書、人数などは7月末取材時)

■企業概要

  • 外務省 国際法局 経済条約課
  • URL http://www.mofa.go.jp/mofaj/
  • 任期付職員の募集がある場合は Webサイトなどでお知らせします。
  • TEL ※外務省03-3580-3311(代)