Vol.72
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高橋宏和氏は、国内メーカー、グローバルコンサルティングファーム、物流大手などの法務を経て、2017年に入社。法務部のメンバーは同氏を含めて全5名

高橋宏和氏は、国内メーカー、グローバルコンサルティングファーム、物流大手などの法務を経て、2017年に入社。法務部のメンバーは同氏を含めて全5名

THE LEGAL DEPARTMENT

#102

株式会社クニエ 経営管理本部 法務部

ダイナミックな企業法務を経験できる日本発のグローバルコンサルティングファーム

法務部門は事業の要である

2009年に設立された、“日本発”の総合コンサルティングファーム、クニエ。NTTグループの一翼として、日本企業の発展支援、および地方創生を軸とした日本社会全体の発展への貢献を掲げ、事業活動を行っている。また、日本企業のグローバル活動の支援のみならず、開発途上国支援など、世界各国の企業や公的機関に対しても、独自のコンサルティングサービスを提供する。

グローバルに事業を展開する同社で、正式に法務部が設置されたのは、17年のこと。その立ち上げを主導した法務部部長の高橋宏和氏に、法務部誕生の意義などをうかがった。

「コンサルティングというサービスは目に見えないため、クオリティ・アシュアランスの一つの要として、“契約”があります。いわば『“契約”を売っている』ともいえます。つまり当社における“契約書”は単なる形式的な書面ではなく、契約書の中にお客さまの経営・事業情報、プロジェクトやプロセスなどを管理する様々な条項を入れ込むことで、“コンサルティング事業の品質管理を行うツール”という位置づけとなっています。法務部はその契約書を取り扱う重要な役割を果たす部署と考えています。このような点からも、当社の急速な成長に応じ、より一層強化されるべき組織として認識され、独立するに至りました」

当然ながら、法務部が関与する、その契約数は膨大だ。

「多い時で、1日30~40件の契約書をレビューすることもあります。当社では“取引単位を小さくすることで、双方のリスクを極力管理しやすくする”というマネジメント方針を執っているため、契約数がどうしても多くなります。ただ、内部統制に沿った考え方で契約書レビューのプロセスが自動化され、多様な情報を集約できるシステムが構築されています。私たちはそのシステム上で契約書を管理するため、さほど困難ではありません。実は、法務部が関与する業務はこうした契約関連業務に留まりません。むしろ戦略的企業法務の多くが、海外案件、知的財産権関連、係争対応、コーポレートガバナンスなどに向けられており、それらを5名で行っています」

株式会社クニエ 経営管理本部 法務部
第32回日経ニューオフィス賞を受賞。“日本発”のグローバルコンサルティングファームとして、日本文化の伝統美を各所で表現。執務エリアやカフェエリアは多様なスタイルを持ち、働きやすさと健康管理に配慮した設計となっている

戦略法務こそが企業法務の醍醐味

同部は稼働して4年目ながら、すでにそのプレゼンスは社内に浸透しており、契約業務以外の個別案件(リスクが感じられるものやお客さまへのアプローチ方法で迷うなど)については、各担当者がそのつど、直接法務部へ相談に来ることも多いという。“同社法務部らしさ”が感じられる事案の一例を、高橋氏が教えてくれた。

「例えば昨年度、当社に対して権利侵害を行った他社と交渉し、和解し、再発防止を合意した上で賠償金の支払いにも応じていただきました。その際、相手方は弁護士を立てましたが、当社では弁護士を立てずに交渉しています」

なぜ、弁護士を立てずに説得により事態を収拾したのか。

「侵害排除は必要ですが、例えば相手が“コンペティターである”ということもあります。その場合、将来的に当社とのアライアンスの可能性もあるということ。私たちは“世の中にあるものすべてが自分たちの競争力を磨いていくための要素となり得る”と考えているので、昨日の敵が、“価値あるアライアンスパートナー”に変わることもあるわけです。一方向に物事を見て“敵だ”と断じていては、ビジネスにおいて良い結果は生み出せません。相手を自分たちのために生かすにはどうしたらよいか――そのように事態を捉え・考えることが、企業の戦略法務の真骨頂であり、仕事をするうえでの醍醐味だと思います」

ただ、そこでは法律の知識やテクニックだけではなく、抽象的だが、「人間力が問われることになる」と高橋氏は言う。

「私自身、様々な訴訟を経験して感じているのは、“専門性があるのは当たり前”の世界だということ。相手と議論をする中で、専門性を戦わせて優劣を決める際、何が決定打になるかといえば、最終的には相手が安心したり、理解し心を開いたり、あるいは信頼してもらえるような対応ができるかということ。つまり、ちょっとした“人間力”の差なのだと思います。お互いにとって最善の到達点がどこかを見極めるには、ビジネス的な視点だけでなく、そこに集まる人たちの状況を見とおす視点が必要。企業法務に携わる者は、そのような人間力、あるいは総合力といったものが試される。実に奥深い仕事であると、私は感じています」

同社では昨年、セキュリティ・トークンを用いた不動産証券化事業の実証実験に参画。これは、改正資金決済法および金融商品取引法の施行に向け、フィンテック企業および外資系コンサルティングファームなどが共同で行うプロジェクトで、国内外における不動産証券化の市場分析やセキュリティ・トークンに係る国内外の税制・規制面を考慮し、その有効性を検証するものだ。同社はアドバイザリーとしてプロジェクトに参加、当然、法務部も法的見地からアドバイスを行った。同じく昨年より、企業活動における不正抑止、インシデント発生時のレピュテーション毀損の抑止、およびクライシス化防止等を目的とした支援サービス「インシデントリスクアドバイザリー」を提供開始。このビジネスモデル構築・運用の際にも、法務部が果たした役割は大きい。

総合コンサルティングを標榜するだけあり、同社ではこうした新市場の開拓や新事業創出事案が引きも切らない。コンプライアンスをはじめとするコーポレート系業務、あるいは海外事業展開におけるFCPА(海外腐敗行為防止法)やアンチトラスト法対応など、企業存続・発展の屋台骨として法務部に求められる業務は多いが、新事業創出というまさにビジネスの最前線で、法律を武器に力を発揮し、仲間の役に立てることこそ、企業法務のやりがいといえる。

「仕事は、“使われている”と感じていては本当の面白さが得られないし、それ以上の成果を上げることもできません。主体的にかかわり、難しい仕事でも面白がって、工夫して入り込んでいく。そうするほど、深いやりがいが得られると私は思います」

  • 株式会社クニエ 経営管理本部 法務部
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自由・ダイナミックに仕事をつくる

高橋氏に、同部のミッションをあらためてうかがった。

「事業の競争力向上に供する働きをすること、常に企業価値を高めるための活動をすること。この2つに集約されます。当社が競争力をつけるために法律ではどこまで許されるかを、時に立法者の立場になって勘案し、業務を遂行する。“法律の解釈”ではなく、企業戦略上・経営判断の一部として、当社の最大価値を担保できる最良のアドバイスを提供すること、リーガルソリューションを描くことが、課せられたミッションです」

実は、高橋氏はこれまで7社に勤務し、長年、国際法務畑を歩んだ経験を有する。そのすべての会社で法務部の創設を主導、また、青山学院大学法学部客員教授も務めてきた人物だ。稀有ともいえるキャリアを経てきた高橋氏が考える、企業法務の存在意義を聞いた。

「今から35年近く前、私が“企業法務畑”を歩み始めた頃のことです。当時、私がCPUとハードディスクドライブを結ぶコントローラーの開発について、シリコンバレーに赴いた折、ある日本大手メーカーが当地のベンチャー企業約300社と秘密保持契約を結んでいることを知りました。彼らは秘密保持契約を結ぶことで、シリコンバレーの企業の開発技術の内容、ステータスをデータベース化し、有効な技術についてはライセンスを結び、既にあるそれらの技術を組み合わせ、全く新たなシステムの開発を行うという、これまでなかった大胆な開発手法を実現したのです。世界の家電・事務機業界の開発競争はこれをきっかけに数十倍のスピードアップにつながったものと思います。つまり、その大手家電メーカーは、秘密保持契約とライセンス契約のたった2種類の契約により、家電業界の開発競争を異次元的に加速させ、市場拡大のきっかけをつくったわけです。そのように、ビジネスの大きなうねりと共に企業法務があることを若い頃に知った私は、以来ずっと企業法務の面白さに魅せられています。企業法務とは、契約一本で、世界を、世界の産業構造を変え得る仕事なのです。それに気づいた者と気づかない者では、仕事への取り組み姿勢、得られる醍醐味、すべてが違ってきます。ダイナミックな視点に立てば、企業法務の仕事は非常に面白いということを、ぜひ多くの方に知ってもらいたいですね」