法務部の業務はおおまかに、中本氏が国内案件、中村友紀(ひとみ)氏が海外案件を担当。部長の安田浩之氏もプレイングマネージャーとして、国内外を問わず多種多様な案件に対応している。
中本氏は都内法律事務所勤務から経済産業省商務情報政策局コンテンツ産業課を経て昨年入社。日本のコンテンツ産業政策を立案・執行する側にいたものの、政策の具体的実現に民間の立場で挑戦し、業界活性化に貢献したいと考えて転職した。
中村氏は台湾でLL.M.を修了後、世界トップクラスの米国系法律事務所の台北オフィス、台湾大手の法律事務所などに勤務し、主に日系企業に向けた業務に従事。オーストラリアと台湾で8年間を過ごして入社。
安田氏はニューヨークをベースに欧米を駆け回って映像制作に携わったのち、ニューヨーク州とワシントンDCの弁護士資格(JD)を取得し、マンハッタンの大手法律事務所に勤務。都合30年余をニューヨークで過ごし、帰国後、国内大手企業の法務部長・執行役員を経て、同社へ入社――と、3名の経歴は、それぞれユニークだ。中村氏は、企業法務の仕事の醍醐味を次のように語る。
「法律事務所でも多くの大型案件に関与してきましたが、そこでは目にすることがなかった“外に出ない契約内容”を扱えるのは、企業法務ならでは。契約内容を細部まで精査し、買い付け担当などと交渉内容や交渉の仕方について協議しながら案件を進めていく。そこに、とてもやりがいを感じます」
「例えば、友紀さんが担当する海外スタジオとの大型契約において、当社は歴史も浅く、小さな企業と見られる場合もあります。しかしそこを気にせず、交渉力を発揮し、まとめ上げる。海外の大手企業と対等に渡り合える交渉力、知恵と経験を持つ実力者が、当社には揃っているという自負があります」と、安田氏が付け加える。
法務部メンバーとして今後、注力していきたい業務について、中本氏に聞いてみた。
「今後、海外プロダクションとオリジナルコンテンツを共同製作する機会が増えていくと思われます。そうなると、例えば新たにLLCなどを設立するかしないか、資金調達や税金面はどう対処するのかなど、様々な権利まわりやスキームを考慮してビジネスを成立させていかねばなりません。今、日本国内にそれができる人材が少ないことを省庁時代に痛感していました。当社は、そのリーディングカンパニーとなっていきたい。業種柄、当社はどうしても“クリエイティブ寄り”の人材が多い。そこに“お金を稼ぐ”“ビジネスとして成立させる”という観点を持つ、いわゆるビジネスプロデューサーを育成していかねばという意識もあります。例えば、今扱っている案件の権利者は誰か?将来マルチ展開するにあたって懸念はないか?など、契約一つとっても、先の観点を武器に、ビジネスにあと一歩踏み込めるチャンスは多々ある。当社にその知見を有した人材が増えれば、さらに企業として成長していけるはず。そして、その実現には法務部の知見が必要不可欠。ゆえに法務部としては、従来業務に加え、その教育にも注力していきたいと考えます」
社内外でクリエイティブとビジネスの橋渡しをし、消費者が楽しむコンテンツとその裏側をどうつなげるかに、全力を注ぐ法務部だ。