他部署を経験したメンバー3名に、そのやりがいなどをうかがった。まず現在、エネルギー法務室・室長を務める服部真理氏。
「私は2度の営業部配属経験があります。営業部内で発生する法務業務担当だけでなく、一営業部員として働いた経験も。私が携わったモザンビークLNGプロジェクトは、世界有数の埋蔵量を誇る超大型プロジェクト。契約交渉のみならず、ステークホルダーとのミーティングに同席するなど、エキサイティングな仕事を経験しました。法務部を飛び出し、現場でどのような業務が行われているか体感したことにより、本当に必要とされている法務支援ができるようになったと思います。商社法務はグローバルかつ多様な分野で営業部と一体となって仕事ができる。語学力が生かせて世界を身近に感じられるという点も、非常に魅力的です。エネルギー分野では近年、脱炭素やESG経営につながる新たなプロジェクトも次々と発足しています。そうした最先端事業にかかわれることも醍醐味です」
現在、人事総務部に社内出向中の佐藤香織次長は、経営に非常に近い部署での経験を積んできた。
「私は監査役室への社内出向を経験しました。当社は監査役会設置会社ですが、コーポレートガバナンスコードの改訂以前から社外役員の意見を尊重して、執行の監督および内部統制の維持を行っています。社外役員の知見を活用して内部統制・ガバナンスに生かすには、専門性の高い支援が必要であると実感する日々でした。監査役の方々は、会社法の第一線の弁護士や、検事総長・公認会計士協会会長を務められた方など“その道のプロ”ばかり。スタッフも同じレベルで対応できるよう、必死に勉強し情報収集する日々でした」
監査役室の業務では、特に組織横断的な連携が重要となる。
「監査役室は取締役会をはじめ様々な機関・部署とかかわります。“社内出向”で、他部署とのつながりもあったので、そこで情報収集したことを生かし、『会社法上ではなく、三井物産としてガバナンスを解釈した場合、何が大切になるのか』と、本などで得たことを“立体的に起こして考える”ことができたわけです。専門的な知見を有する監査役を支えることは、法務部で培った会社法のスキルだけでなく、当社内の様々な部署の動き、働き方などをミックスして考えないとできない仕事でした」
そうした動きが、監査役から、ある実感を引き出した。
「『弁護士など法務の素養のある人が、会社制度の根幹を考えるような経営企画や人事企画などの部署でもっと活躍すべき』と監査役に言われたことがきっかけとなり、その後、人事企画室に社内出向することに。指名委員会や報酬委員会の事務局として対話するなかで、経営幹部が真剣にガバナンスについて考え、インテグリティを中心に据えた経営を行おうとしていることを実感し、それを施策に落とし込むという業務を経験しています。役員報酬制度の改革など、透明性を担保した企業のあるべき姿を追求できることも大きいです」
総合開発室・室補の藤本智穂氏は、商社法務ならではの海外駐在経験者である。そのキャリアの魅力を話してくれた。
「私は、入社後にビジネス法務室で経験を積んだ後、中国での語学研修や米国LL.M.を修了、さらにコンプライアンス室で、コンプライアンス事案対応や全社的なコンプライアンス制度にかかわる様々な取り組みを、企画法務室で株主総会・取締役会事務局担当を経験しています。米国ロースクール修了後は、すぐ上海に赴任。当時は上海の拠点にはまだ法務部がなく、業務部の一メンバーとしての配属でした。まさに現場の仕事に携われたことは得がたい経験です。例えば許認可の問題一つとっても、何らかの問題が生じた際は、『法律ではこうだから』で済むことはほとんどなく、『当局に行って確認しましょう!』とすぐに出向き、現地当局とやりとりする。理屈がとおらない現場の難題を、営業や物流や経理など他の複数部署のメンバーも総動員で解決するというケースも多々ありました。当時のチームメンバーとの絆は、今でも私の宝物です」
藤本氏は現在、法務人材の教育や業務効率化のための法務DX推進の中心的役割を果たしている。
「本店・海外拠点どこにどんなニーズがあるか、肌感覚で理解しています。様々な部署を経験したからこそ、相手のニーズをつかんで吸い上げる力が身につきました」