同社では2021年11月、業界で類を見ない新・賃貸管理プランをリリースし、“サブリース問題”に一石を投じた。このプロジェクトについて、古澤賢太郎クリストフ氏が説明してくれた。
「従来は当社も、不動産物件の貸主(オーナー)と転借人の間に当社が借主・転貸人として入る、広義でのサブリース方式のサービスを提供していました。20年にサブリース新法が施行されましたが、マスターリース契約の借地借家法の適用はそのままで、貸主にとって不利となる条件が残ることを当社は従前から課題に感じていました。新法施行前に、当社代表から『サブリースのかたちを当社が先導して変えていきたい。透明性や公平性が担保できる方法を考えてほしい』という宿題が。結果、石川、鍋谷と試行錯誤しながら『将来集合債権譲渡』という貸主にとって有益となる新しいスキームを設計し、プラン名称『NEOインカム』としてリリースすることができました。このプロジェクトは、経営層、財務、経理のメンバーと協働で行いましたが、我々法務部がアイデアを出し、主導で進めたもの。特に貸主にとっては、従来のマスターリース契約のデメリットを解消し得る、画期的なプランになったと自負しています」
同プランは「将来集合債権譲渡型賃料収受スキーム」として、商標登録、ビジネスモデル特許を出願中とのこと。しかしながらリリースまでには、多くの関係者との交渉や調整が必要だった。
「不動産業界では初めてとなるスキームであり、プランのため、従前と異なる会計処理が必要になります。そのため、監査法人と交渉しました。また、“債権を売って対価を得る”スキームのため、税務上、不動産所得に該当し続けるか、国税庁と協議し、さらに、各金融機関に権利保全の説明に回り……と、社内はもちろん、多くの関係機関とコミュニケーションを取りながら走り続けました。我々には、このプランを業界スタンダードにしていきたいという目標があります。そのためにはまず、不動産業界内の理解を得ていくことが不可欠。そのうえでプランの運用機会が増えていけば、社会的意義の高い取り組みとなることは間違いありません。こうした慣例や慣習を打ち破るようなプロジェクトにかかわれることも、当社法務部ならではの面白さです」(古澤氏)
また同社では、やはり業界初となる“不動産業界のDX化”にいち早く着手。主導した鍋谷氏は、その取り組みを、こう説明する。
「発端は、石川が法務からも『不動産業界のDX化を決行したい』と宣言したこと。しかし、売買契約や賃貸借契約一つとっても、買主・売主・買主側の仲介・売主側の仲介と、最低4者がかかわります。その全者がDX化しなければならないことが一番の難題。パソコン一台あればできるはずのDX化ですが、『第一歩がなかなか踏み出せない』と。そこで我々主催で、不動産企業を招いたセミナーや研修などを何度も開催しました。その甲斐もあって、DX化に乗り出す不動産企業が徐々にではありますが増加中。手応えを実感できています」
「国内の不動産企業は約12万社あり、最小規模は1~2名体制です。また、小さな不動産企業では高齢化が進み、後継者問題に悩むケースも少なくありません。そうした企業ほど、DX化しておかないと事業承継が難しくなる。我々は、不動産業界全体でそのように手付かずになってしまっている課題について、最先端のテクノロジーを活用しながら、変革していきたいと思っています」(古澤氏)