Vol.83
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法務部は出向者を含め25名弱の陣容。中途入社者の割合が高いため、まず事業理解を深めることを目的に、中途入社者は中堅・ベテラン社員と1年以上バディ体制を組む

法務部は出向者を含め25名弱の陣容。中途入社者の割合が高いため、まず事業理解を深めることを目的に、中途入社者は中堅・ベテラン社員と1年以上バディ体制を組む

THE LEGAL DEPARTMENT

#130

株式会社ベネッセホールディングス 法務部

事業創出とリスクマネジメントの両立にコミットし続ける

事業の変容に伴うリスク対応を加速

「よく生きる」を企業理念に掲げ、教育、生活、介護・保育などの事業を展開するベネッセグループ。そのグループ経営方針策定と経営管理を行うのが、株式会社ベネッセホールディングスだ。

「当社グループは現在、一丸となって事業変革を推進中です。事業変革に伴い、変容・複雑化するリスクの可視化とコントロール、そして迅速な事業の変革推進をトレードオフすることなく、両立させることが不可欠です」と語る、部長の菅沼博文氏。

「スピードを担保するためには、各カンパニーの事業戦略やプロジェクトを“川上”でつかむこと、そしてその仕組みを構築し維持していくことがポイントです。そこで各カンパニーに法務部メンバーが席を置き、経営会議など重要会議に参加する『カンパニー派遣制度』を実施。早期に事業戦略や新規プロジェクト・企画の方向性を把握でき、その段階から関与できるほか、我々もカンパニーの一員の意識をもって現場とともに様々な課題に取り組むことで、カンパニー側のメンバーの安心感が高まり、互いの信頼関係も深まります」

この仕組みを活用し、コンプライアンス体制の構築も推進する。

「法務部とカンパニー・事業会社が一体となって、年度ごとにそれぞれの事業上のリスクや課題を抽出、その原因を分析し、対策を立案、実施した対策の効果検証を実行するというPDSを毎年度推進しています。グループ、カンパニー、事業会社、役職員自らが変容するリスクに対し、強靭かつ柔軟に対応できる体制・風土構築が、このプロジェクトの最終目標です。今期もベネッセホールディングス経営会議でのフィードバックを踏まえ、法務部メンバーが各カンパニー・事業会社と一緒に、コンプライアンス・リスクマネジメント・システムを設計推進しています」

事業創出にコミットする

各課メンバーに、仕事内容をうかがった。まず、佐藤美緒氏から。

「当社では今年度より、幼児から高校生向けのオンラインならいごとサービス『チャレンジスクール』を新規事業としてスタートしました。ダンス、そろばん、プログラミングなどをオンライン上で学ぶサービスです。同時並行で何ジャンルものリリースを進める必要があり、スピーディに対応を考えていく必要がありました。従来の通信教育事業とは異なり、多様なアライアンスパートナーと協業するビジネスモデルで、新設された事業部門には様々なバックグラウンドを持つメンバーが集結。彼らと事業リスクの抽出などを行い、パートナーとの交渉の進め方、契約条件の設定、お客さまへの告知など、細かな点までアドバイスしています。当該事業部門と同じフロアに席を置いていることもあり、みなさんはよく相談に来て、我々からも『あの件はどうなりました?』と。そうしてコミュニケーションを取ることで、部門特有の課題が見えてくるという効果がありました」

また佐藤氏は、カンパニー戦略推進部門と共同で、この事業部門専用の研修を企画。ほぼ週1回のペースで実施している。

「特定の部門に向けて、ここまで継続的に実施する研修というのは初の試みでしたが、その事業で起こり得るリスクを想定したリアルな内容にしています。特定の部門の悩みに寄り添い、解決していくことにより、実践的な知識の底上げに貢献できたと思います。実情に照らした効果的なサポートができますし、相手の喜ぶ顔も見えてやりがいがあります」(佐藤氏)

国際法務・知財課課長の植村健氏は、海外現地法人への赴任経験がある法務部員の一人である。

「私が中国の現地法人に着任したのは2011年です。中国における事業が急拡大して法務案件が増大し、日本本社とのガバナンス連携強化が必要になるとともに、当社キャラクター製品の偽物が出回るなどしたため、現地の法務体制の整備が必要と判断され、赴任することに。私と中国人スタッフの2名でスタートし、少しずつスタッフが増え、最終的に現地法人内に法務部が設置されました。言葉や考え方の違いをお互い受け入れながら、相互に理解を深め、事業の成長とともに、組織を強化していく貴重な経験を積むことができました。また、法務関連業務だけではなく、ISO27001の取得プロジェクトの責任者を務め、経営企画業務に携わるなど専門領域外の業務にも挑戦する機会も得られました。当時、まだ若かった自分を抜擢し、派遣してくれたことに感謝しています」

猪狩勇人氏は、大手法律事務所出身のバックグラウンドを持ち、新規事業開発、海外案件や、M&A・出資案件、トラブル対応、組織変革プロジェクトなどを担当する。

「新規事業開発はインキュベーション期から関与するので、非常にやりがいがあります。その検討においては、『そもそもどんな事業が顧客に“刺さる”か』『どんなビジネスモデルであれば法令に抵触せず、かつリスクを抑えて展開できるか』『どのようなオペレーションを構築すれば確実かつスピーディに事業展開できるか』などについて、事業担当者や財務・経理・税務部門などと何度もディスカッションを行い、コンプライアンスやリスクマネジメントの観点だけでなく『どうすれば事業が成功に最も近づけるか?』を常に考えて仕事をしています。そのように踏み込んで、事業部門や他部門とともにゼロから事業をつくっていけることが醍醐味です。また、社会・事業環境などが日々複雑化していくなかで、法務としての専門性はもちろん、事業への理解をより深め、財務・経理・税務といった分野の知識もより高めていかなければいけないと、日々の仕事を通じて感じています」

菅沼部長は言う。

「海外案件や新規事業の立ち上げでは、法規制や契約リスクのみならず『社会やお客さまのためになるものか』という自問自答を経て、そのうえでビジネススキーム自体の検討を行うことが重要。そこに知恵を絞った経験は、必ずその人の糧になる。法務知識を軸として、どんどん“横幅”を広げていく――それが、我々の目指す法務人材のキャリアパスの一つです」

経営に資する法務人材を育成

猪狩氏は「財務や経理・税務のほかにも、経営戦略、組織マネジメントやDXなどへの理解も深めていきたい」と語ってくれた。同社では、その機会が様々な方法で提供される。一つは「リスキル休暇」だ。同社はリスキリング(社会人の学び直し)を推奨しており、猪狩氏もリスキル休暇を使って学び直しの時間をつくっている。また、社員自らが進めたい能力開発(外部研修の受講・資格の取得など)を、会社が費用負担する「能力開発ポイント」制度などもある。

「重要なリスク事案には対策チームが組成され、法務部が参加し、事務局業務を担うこともあります。今後は、税務・会計・労務などの知識もあったほうがいいでしょう。深く知る必要はないけれど、各コーポレート部門と当たり前に対話できる基礎知識や感度を持つべきです。カンパニー派遣制度の効果もあり、今、法務部は事業部門の最も身近な存在となっているので、税務・会計・労務リスクについて相談を受けることもある。各コーポレート部門が効率的・効果的にそのエクスパティーズを発揮できるよう、法務部が事業部門とのハブになることも法務部の重要な役割です」(菅沼氏)

経営にも現場にも近い法務部、コーポレートの連携機能を担う法務部では「何よりも人が財産」だ。

「当部では独自の『スキルマップ』を策定し、運用しています。経営が我々に求めるミッションおよびそのミッションを実行するために法務が果たすべき役割をカテゴリごとに定義、可視化。そして、法務部の役割を実行するためにメンバーに必要なレベルを、カテゴリごとに専門性と実務力に応じ1~4段階で設定し、専門性と実務力両軸の観点で達成度合いを見る。それをもとに本人と上長で個人カルテを利用し、定期的に相互確認する。カテゴリごとの専門性、実務力の経年の推移を個人カルテで確認しつつ、各自のキャリアステップを一緒に検討しています。今後も丁寧に人材を育て、コーポレート部門やカンパニー各社と連携し、事業をけん引しつつ、経営に貢献する法務部であり続けたい。そのためには、我々法務部メンバーの、さらなる成長が不可欠なのです」(菅沼氏)

※取材に際しては撮影時のみマスクを外していただきました。