「会社のビジネスプライオリティはだいたい3年単位で変わっていくので、仕事に飽きることがない」と中島氏は語る。法務部が今、注力しているのは技術革新の最前線に立つ生成AIツール「Microsoft365 Copilot」(以下、Copilot)に関する法務業務だ。小川氏は、こう振り返る。
「私が入社したのは23年1月ですが、最終面接は22年9月でした。面談で、ビジネスに即応し、事業部門と連携して柔軟に動く法務のあり方が求められていることを聞き、自身の経験を生かせると考えて入社を決意。しかし、数カ月後の入社時には生成AI技術が急速に普及し、社会全体で大きな変化が起きていました。Microsoftでも、生成AIソリューションの展開が本格化しており、法務部門には『責任あるAI』の考え方をお客さまに適切に伝え、理解を促進する役割が求められることに。結果、私も、面接時には予想していなかった、日本市場における『責任あるAI』キャンペーンの統括、お客さまへの理解促進活動に、入社早々取り組むことになりました」
Microsoftが外部に向けて発信する「責任あるAI」は、公平性、信頼性と安全性、プライバシーとセキュリティ、包括性、透明性、説明責任という6つの原則からなる。これらは、顧客が安心して同社のAIソリューションを採用し、社内外への説明責任や規制リスクへの対応をスムーズに進めていくためのよりどころとなっている。
「お客さまの多くは、『生成AIを活用すべき』と感じる一方で、『リスクがありそうで不安』と懸念されています。そうしたなか、Microsoftのプロダクトがプライバシーやセキュリティといった観点をどのように考慮して設計・開発されているかをきちんとご説明することが、ビジネスの信頼性を支える重要な役割になります。この活動自体がMicrosoftのビジネスの強みの一つとなって、製品選定時の競争力につながっていると自負しています」(小川氏)
梶元孝太郎氏は、こう補足する。
「実際に生成AIを活用しようとする際には、お客さまが法的な懸念を感じることもあり、その場合は私たちがご説明に伺うことも多々あります。最も重要なのは法務部からも主体的に情報を発信し、Microsoftが提供するサービスが十分に信頼に足るものであることを積極的に示していくこと。こうした対外的な情報発信活動も、法務チームの重要な業務の一つです」
小川氏は現在、新たなミッションを遂行中だ。
「『責任あるAI』の推進を引き続き重要テーマとしつつ、法律業界での生成AIの活用推進にも注力しているところです。特に、生成AIを活用したAIアシスタントの『Copilot』を法務部門や法律事務所の法律業務に活用するメリットを丁寧に伝えていく、というアンバサダー的な活動に多くの時間を割いています。一般的にイメージされる法務部の業務とはおそらく異なり、Copilotを私たち自身がどう活用しているかを生の声として共有することで、Microsoftのビジネスを後押しするという〝カスタマーゼロ〟としての取り組みにも注力しています」(小川氏)