Vol.97
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約60名が所属するグループリスク管理統括部は法務部(26名)、リスク管理部、GEHS推進部(2026年新設)で構成され、荏原グループ全体のリスクヘッジを担う。弁護士は中国律師を含めて7名(全社9名)。なお、相原氏は62期、鈴木氏は64期

約60名が所属するグループリスク管理統括部は法務部(26名)、リスク管理部、GEHS推進部(2026年新設)で構成され、荏原グループ全体のリスクヘッジを担う。弁護士は中国律師を含めて7名(全社9名)。なお、相原氏は62期、鈴木氏は64期

THE LEGAL DEPARTMENT

#176

株式会社荏原製作所 グループリスク管理統括部 法務部

グローバルで拡大するインフラ事業を支援するプロフェッショナル集団に!

社会基盤を下支えする役割

1912年の創業以来、ポンプを中心とする産業機械メーカーとして、社会・産業インフラを支えてきた株式会社荏原製作所。「グローバルエクセレントカンパニー」へのさらなる進化を掲げ、国内はもとより、北米・南米地域、欧州・中東地域、アジア・オセアニア地域、アフリカ地域に拠点を置き、「荏原グループ」として世界展開を図る。同社の海外売上比率は60%超。そのグローバル化、かつ高度化するリーガルリスクに対応しているのが、グループリスク管理統括部法務部だ。

まず、法務部内の業務体制を法務部長の野村宗達氏に聞いた。

「法務部には3つの課があり、精密・電子、エネルギー、建築・産業、インフラ、環境と5つのカンパニーの事業、および水素・航空宇宙などの新規事業への伴走を2つの課に振り分けています。もう1つの課では、中小受託取引適正化法や建設業法、独占禁止法、建設業許可・経営事項審査申請など特定の領域を所掌しています」

続けて同部のミッションを、野村氏が教えてくれた。

「荏原グループの健全かつ持続的な成長のため、専門性の高いリーガルサービスを迅速かつ適切に提供する。そのうえで、法務リスクを最小化ではなく、“最適化”する。そして、機動的かつ効率的な事業活動の遂行を支え、企業価値の保全と最大化に貢献することです。当社は、世界の社会・産業インフラを支える、いわば“縁の下の力持ち”です。当社法務部は、その事業基盤をさらに下支えする、重要な役割を担う存在であると自負しています」

同社ではカーボンニュートラルなどの様々な社会課題解決に向けて、水素事業、航空宇宙事業、エコ・GX事業、マリン事業、バイオ事業といった新規事業領域にも取り組む(写真は、本社エントランスに設置されている“ヒストリースロープ”)

M&Aや海外交渉にも“当事者”として関与

近年、同社では、新規事業参入やクロスボーダーM&Aなどが活発化している。

例えば、三菱電機株式会社からの三相モーター等事業の譲り受け、消火用ポンプ組み立てを行うブラジルのジェルメッキ社からの持分の譲り受け、川崎重工業株式会社からの液体水素昇圧ポンプ等の受注などだ。

これらの案件に関して、相原恵梨氏は法務のやりがいを次のように語る。

「こうしたプロジェクトのほとんどで、法務部はキックオフの段階からメンバーとして参画しています。例えば、三相モーター等事業の事業譲渡案件では、外部法律事務所とのリエゾン業務を担いながら、日本とタイにまたがる複雑な法的論点を整理して契約書を作成、サイニングまで伴走しました。また、ジェルメッキ社の持分譲受案件では、リスク低減のため、対象事業を分社化して取得するという手法を採り、その際も、現地法律事務所と連携し、週次でミーティングを重ねながら対応を協議しました。最終局面まで先を見通しづらい難しい仕事でしたが、海外特有の不確実性を痛感しながらも、無事にクロージングすることができました。法務部がビジネスの当事者として事業に伴走できることは、何よりの喜びです」

また、相原氏が課長を務めるグループ法務推進課では、新規事業の法的支援も担っている。

「荏原グループでは、“水素エネルギーの社会実装”を目指し、液体水素ポンプの開発・製造を行っています。最近では、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトの一環で、川崎重工業株式会社様から、『液化水素サプライチェーン商用化実証』のための液体水素ポンプを受注しました。受注に至るまでは、海外を含めた当社関係者との協議を重ね、当部門内でも新規製品に関する知識を深めながら、完遂へと導くことができました。ビジネスとしても、また“これからの社会”をつくっていくという観点でも、やりがいのある案件に携われることは、当社法務ならではの醍醐味であると思っています」

例えばジェルメッキ社の案件では、入社3年目の若手メンバーも中核として参画している。

「当社法務部では、年次あるいはプロジェクトの大小にかかわらず、本人の意向を踏まえて、積極的に挑戦することを後押しする風土があります」と、野村氏。相原氏も、「希望する人には、“打席を与える”ことが当部の良さ。チャレンジして、そのなかで学んでもらうという風土です。法務部内には、各自が失敗を恐れることなく、目の前の仕事に注力できる環境が整っています」と語る。

高度な専門性を持つプロ集団を目指す

2022年に中途入社した鈴木美香氏は、法律事務所での幅広い実務経験を持つ。「事業により近い場所で、事業に対する深い理解をもとに法務支援を行いたい」「世界の社会・産業インフラを支える会社における法務支援を通じて社会に貢献したい」という思いが、入社の動機だった。

入社後に感じている魅力を、鈴木氏はこう語る。

「当社は幅広い事業領域を展開しており、その事業ごとにビジネスモデルや商流が異なります。それぞれの事業に応じた最適な法務支援を模索できることに面白さがあると感じています。また、同じ組織の一員という立場であるため、得られる情報量も多く、スピードも速いと感じます。社内外の事情を把握したうえで、関係部門とタイムリーに協議を行い、最適な方針を模索しながら、ともに会社をより良い方向へ進めていくことに、大きなやりがいを感じています」

さらには、「事業を支える機能として、法務組織のあるべき姿を考えられる点もインハウスならでは」と話す。   

同部では、法務関連の社員教育企画・運営も担っている。法務部が実施する研修は、新入社員向けの契約基礎研修に始まり、管理職候補向け研修、新任管理職研修、新任役員向けの会社法上の責任解説まで、キャリアステージに応じた体系的なプログラムを備えている。加えて、秘密保持、取適法、独禁法、フリーランス保護法といったテーマ別研修も実施し、内容によっては全社員が対象となる。これらの研修プログラムは、すべてオリジナルで作成されている。研修の運営体制もユニークで、新入社員研修は入社年度の浅い若手メンバーが担当するのが通例だ。

「先輩社員のサポートのもと、若手主体で実施してもらっています。法律事務所で培った専門性や経験を土台に、事業伴走はもちろんのこと、マネジメント経験も含めて、インハウスローヤーならではの多様な業務経験を日々積ませてもらっています。法律事務所勤務とはまた異なる角度で、ビジネスや組織に関わることができています」(鈴木氏)

今後の注力領域として、野村部長は2点を掲げる。

第一に、グローバル連携のさらなる深化。海外事業の拡大に伴い、法務機能を持たないグループ会社も多いなかで、いかに効率的に連携して事業を継続させるかが当面の課題だと言う。

第二に、業務効率化とAI活用の全員参加。今年2月に契約管理システムを新たに導入し、リーガルテックの試行を積み重ねるなか、今期からはAI活用を目標管理制度に組み込み、全部員が取り組む施策として推進している。この取り組みに関し鈴木氏は、「部内全体で、標準的にAIを実務で活用できる環境を整え、業務の効率化と平準化を実現する」と語る。

そのために、若手・中堅混成の法務部AIプロジェクトチームを立ち上げ、ユースケースのマッピングやプロンプトライブラリーなどの整備を進めている。

さらに、野村氏がその先に描いているのは、「より高度な専門性を持ったプロフェッショナル集団を形成していく」ことだ。

「法務部のメンバーそれぞれに、自身の強みといえる専門領域を持ってほしいと願っています。環境法でも、宇宙法、取適法でも、M&Aでも、特定の海外法域でもいい。そうした専門性を各自が培い、よりプロフェッショナルな組織体にしていくことを目指していきます」

年に1回、上司と部下が希望するキャリアについて本音で話し合う「キャリアマネジメントプログラム」を実施。双方向で、本人の希望に沿った業務アサインを心がけている