富裕層法務への注力は、AI時代においても代替されにくい知見の蓄積につながり、“競争力の高い専門性”を持つ弁護士が育つ場になると考えている。岩崎弁護士はその背景をこう語る。
「複数の法分野にまたがる案件は、富裕層関係に限らず世の中に相当数あります。しかし、そうした案件に横断的に対応できる弁護士は意外と少ない。さらに富裕層案件となると、資産規模や家族構造、感情の機微といった富裕層ならではの要素が複雑に絡みます。そのような案件は件数自体も限られるため、経験を積む機会は一層希少です。当事務所では、まさにそうした案件に継続的に携われる。感情の問題や富裕層特有の複雑さはAIが対応しにくい領域でもあり、ここで鍛えられる実力はAI時代においても確かな競争力になるだろうと考えています」
まず各自の得意を見いだし、得意を発揮し得ることを積極的に任せていくのが、同事務所の方針だ。一件一件の案件に集中し、依頼者に深く向き合える環境づくりにも力を入れているという。
「当事務所では、どの案件も必ず2、3名以上の体制で取り組みます。役割は、主担当、レビュワー、サポートに分けています。どの案件をどう任せるか、どの役割を誰に任せるかは、まずその人の得意を起点に考える。そのうえで、“誰かの不得意”は、それを得意とする人が補う、といったチーム体制を大切にしています。一人ひとりが生き生きと仕事を進め、『これは自分に任せてほしい』と言えるスペシャリストになれる、そんな環境と仕組みを一層充実させていきたいと思います」
富裕層法務では、資産、家族、会社、感情が複雑に絡み合うなかで、何が本質的な解決なのかを考え抜く必要がある。依頼者の悩みは、資産の多寡だけでは測れない。孤独や葛藤、不安に向き合い、法的な解決にとどまらない支え方が求められる。こうした経験は、弁護士としての視野を広げ、人としての厚みを育てる。経験弁護士にとっても、これまで培ってきた企業法務、家事事件、相続、税務、信託、訴訟対応などの知見を、富裕層法務や創業家向けの支援に活用する余地は大きい。既存の専門性を土台にしながら、これまでとは異なる複雑さや奥行きに触れることで、新たな強みを獲得し、自分ならではの専門領域を築いていける環境を、同事務所では目指している。
「大切なのは、目の前の依頼者に誠実に向き合い、難しい問題から逃げずに考え抜く姿勢です。そうした経験の積み重ねが、競合にもAIにも代替されない、その人自身の力になると考えています」
同事務所では現在、経験弁護士の参画を積極的に求めている。岩崎弁護士が重視するのは、スキルや経歴よりも“人となり”だ。
「真面目で誠実な方と働きたい。これが率直な思いです。依頼者と向き合い、チームで仕事をする以上、誠実さと責任感こそが、大切だと、私たちは考えています」
富裕層法務には、どのような社会的な価値があるのか。岩崎弁護士に、あらためて聞いた。
「富裕層と呼ばれる方々の世間のイメージは“強者”かもしれません。しかし実際には、多すぎる資産や責任が、その生き方を複雑にし、特有の悩みを抱えていることが少なくありません。そうした悩みから解放してあげられること。それが依頼者を支える弁護士としての、これ以上ない価値だと考えます。また、富裕層の方々は自身や法人を通じて多くのステークホルダーに影響を与えています。彼らの課題を適切に解決することは、ステークホルダーひいては社会全体にとってもよい結果となるはずです。『自分が受け取っている以上のものを与えられているか』という問いを持ち続け、その姿勢で日々を積み重ねていくことが、社会貢献につながると信じています」