「市民一人ひとりの個別救済は、もちろん私たちの喜び。それに加え、〝少しずつの前進〞を積み重ねて、制度・法律をよりよく変えていき、普通の人たちが当たり前の生活を享受できる社会をつくっていくこと。そこで弁護士として適切な役割を果たすことが私たちのやりがいです」
例えば同事務所が関与する事件には、「残業代請求事件」の最高裁逆転勝訴判決(判決文は最高裁判所判例集に掲載)、菊名自動車教習所事件等に代表される「職場存続・再生事件」、近年増加傾向の、非正規労働者の解雇事件、あるいは米兵による強盗殺人事件の国家賠償等請求事件等がある。常に市民の側に立って、〝基本的人権の擁護と社会的正義の実現〞に各々が取り組んでいるという。膨大な時間を要する事件も多く、なかには収入に結びつきにくい性質のものもあるだろう。しかし、小口弁護士はこう続ける。
「当事務所のようにこれだけの人数がいれば、経済的な面はフォローし合えます。何よりも、精神的な支えとなる仲間がいる意義は高い。また自分一人では難しいと思われる事件でも、所内の弁護士に相談したり、協同事件とすることで乗り越えられる。〝集団〞〝組織〞であるからこそ、こうした仕事が継続できているのだと思います」
同事務所の弁護士は全員、自由法曹団、青年法律家協会、日本労働弁護団の三団体に属している。神奈川県は特に、公害事件や労働事件など弁護団を組織する必要がある大きな事件も多く、団体所属の、所外の弁護士と与する機会も多いという。
入所3年目となる清水俊弁護士は、この事務所の魅力を次のように語る。
「入所1年目は事件や法律相談を共同で行いますが、2年目からは独り立ちです。例えば、当事務所で行う法律相談は1日2回で週5日あり、持ち回りで各弁護士が担当します。普通の事件なら、受けた人が一人でやるか、誰かと一緒にやるか、特定の分野であればそれが得意な弁護士に担当してもらうかを自分で判断できます。また、弁護士間にパートナーとアソシエイトという上下関係はなく、風通しが非常によいと思います。つまり、率直に意見を出し合える環境なのが一番の魅力です」