「我々は、法律知識や解決のための選択肢を提示するだけでなく、必要に応じて『選択肢はこれだけあるが、私はこれが最適と思う』と積極的に意見を述べるようにしています。時には法律とは関係ない相談もありますが、できる限りアドバイスする。そもそもクライアントにとってトラブルや紛争はないほうがよいものなので、トラブルを未然に防ぐ体制づくりの提案など、組織コンサルティング的なアドバイスをするケースも多いです」
根底にある事務所理念は「社会正義の実現に資するクライアントの目標達成に貢献すること」。社会のために自分たちがこういう事件を解決するという姿勢ではなく、クライアントが世の中全体に波及する成果を上げるための支援をしていく――そんな姿勢だ。これが浸透しているため、問題に直面した時も個々の判断がぶれない。
もう一つの強みは〝人を育てる仕組みがある〞こと。その軸が独自のOJTだ。
「基本的に、若手と経験のある弁護士のチームで取り組みます。若手の案件へのかかわり方は4つのステップに分けています。①リサーチやメモ作成など基本的なことを指示通りに行う、②それができたうえで、案件の方針を考え、先輩と協議する、③方針立案し、先輩と協議したうえで事前了解を得て、自分で案件を進める、④案件を一から任せる、というものです。どのステップで行ってもらうかは、本人の経験・能力や案件の内容を踏まえ、担当する弁護士が協議で決めています。対外的な成果物のクオリティを維持することは大前提ですが、その範囲内でできるだけ若手弁護士に成長するチャンスを与え、順に経験できるようにしています」
またOJT以外でも、所内外の勉強会に加え、月1回の面談の機会を設けている。
「今月できたこと、できなかったこと、来月に取り組みたいこと、そのために協力してほしいことについて、話を聞いています。『勝手に伸びろ』ではなく、本人が大事にしていることを先輩や事務所に共有してもらい、事務所としてそれを応援していこう。そのように考えて面談に臨みます」
後進にそんな教育をしたかったことが、独立した理由の一つだと語る豊島弁護士。
「みなさん『こんな弁護士になりたい』という想いがあって、厳しい試験を乗り越えてきたと思います。しかし〝弁護士業界〞は、たまたま就職した事務所でたまたま巡り合った仕事によってキャリアが決まっていくこともあり、偶然に左右されているような気がしてならないのです。せめて当事務所の弁護士には、本当になりたい自分になれるプログラムや機会を与えたい。そうした想いで運営しています」