経営理念に掲げた〝成長〟は、重要なキーワードである。川崎弁護士個人ではなく、久屋総合法律事務所という〝組織〟を頼り、相談を寄せる顧客が増えてきたことは〝組織成長〟の表れだ。弁護士自身の成長の観点でも、同事務所では様々な工夫を凝らす。例えば、給与に関していえば、パートナーに昇格して初めて事務所の収益に連動した給与を得ることができる事務所が多いなか、同事務所では、入所後数年を経過したアソシエイトも、パートナーと同じく事務所の収益に連動した給与を得ることができる制度を設けている。
「当事務所では、パートナーとアソシエイトという区分に加え、アソシエイトのなかに、収益に連動しない段階と、収益に連動する段階を設けています。入所後は非連動からスタートし、一定の水準に達した段階で収益連動に移行し、その先にパートナーというステップがあります。収益連動に移る目安は、事務所が求めるクオリティを体現できているかどうかです。そのため、すべての案件に、少なくとも一人は収益連動の弁護士が責任を持って関与します。そして、収益連動に切り替わることで、事務所の成長と自分自身の成長が直結する感覚を持てるようになります。できるだけ早い段階から、経営的な視点を持ってもらいたいと考え、この制度を採っています」(中村弁護士)
この制度設計の背景には、弁護士個人が専門性や案件処理能力を高めるだけでなく、事務所運営や収益構造を含めた全体像を理解し、所属弁護士全員で協力しながら成長していくことを重視する考え方がある。中村弁護士は続けてこう語る。
「事務所の売上やコスト構造、給与の考え方については、可能な限り透明性を確保しています。入所1年目の弁護士にも、事務所の売上や、パートナー・アソシエイト全員の給与の情報を開示しています。経営情報を共有することで、立場や年次にかかわらず、同じ視点で事務所運営に協力できる環境を整えています」
この発想の出発点は、「所属弁護士全員で努力し、喜びを全員で分かち合おう」ということ。また、「専門家集団とは、独立した一人ひとりの職人という意味ではなく、所属弁護士が常にコミュニケーションを取り合い、チームとして、仕事に対して等しく責任感・情熱をもって取り組む集団である」という思いが根底にある。
「幸いにも、多様かつ優秀な人材に入所していただけている。その結果、時間あたりの生産性が高く、19時頃には全員が帰宅することができています。東京の大手事務所のような案件を毎日担当することはできませんが、『仕事のクオリティには妥協したくない』『優秀なメンバーとチームで仕事をしたい』『ただ、私生活も大切にしたい』という弁護士には、最適な職場だと思います」と、中村弁護士は笑顔を見せる。
事務所の今後について、川崎弁護士と中村弁護士は、こう語る。
「弁護士の人数を何名まで増やしたいという目標はありませんし、今の事務所の雰囲気や文化は、あまりに大人数では維持が難しいと思っています。しかし新しい方に入所いただくたび、新たな視点や気づきが生まれ、この事務所のかたちができあがってきたと感じています。そのため、事務所の理念に共感いただけて、ともに情熱をもって業務に取り組めるメンバーを今後も徐々に増やしていきたいと考えています。所属弁護士が協力しながら成長できる環境を、全員で作り上げていきたいですね」