同事務所の顧客層は、当初想定していた新規株式公開(IPO)準備段階の企業だけでなく、上場企業が多くを占める。タイムチャージに疑問を持つ顧客からは、「業界のゲームチェンジャーになり得る」といった評価も得ている。
「M&A、金融規制・ファンド、労働法務、LPO、内部統制の立ち上げ、不祥事対応・不正調査、顧問契約といったサービスごとに月額報酬の金額を設定し、本契約の前にお客さまと綿密に認識のすり合わせを行ったのち、『何をどこまで依頼すべきか。してよいか』といった業務範囲を記載した提案書や契約書を提示します。ただ、いずれのお客さまにも最初に必ず、当事務所のビジョンをご説明し、これに共感と納得をいただいたうえでお付き合いを始めます。ですから、我々にとってサプライズとなる追加やイレギュラーのご相談は、まずありません。ただし、先ほども話したとおり、ビジョンに共感いただいているお客さまと中長期的な関係性を築いていくためであれば、スコープや契約書に明示していなかったご相談も、すべて受け止めます。そういった我々の姿勢、スタンスを多くのお客さまから支持していただき、仕事のリピートやさらなる新規案件の獲得につながっているようです」
固定報酬は、顧客と弁護士との信頼関係があって成立する仕組みだ。「ビジョンに共感してくれた顧客のみとの付き合いであるためストレスがない」と、立川弁護士は言う。具体的にどのような案件が増えているのか。
「法務機能の一部をリプレイスするインハウスサービス(LPOサービス)のご依頼が増えています。我々の場合、法律相談対応や契約書のレビューなど典型的なサービスは当然提供するとして、プラスアルファで、どの企業に対しても『我々が関与することにより〝法務機能の強化につながる施策〟を必ず提案しよう』という姿勢を徹底しています。法務部が機能している会社であっても、例えば事業部から受ける法律相談や契約書(レビュー)の導線・伝達方法についてヒアリングしていくと、何らかの課題が見つかるものです。その課題解消に向けて、〝法務部員のストレスにならない改善方法〟を検討し、マニュアル化を提案したり、ICTツール活用の助言を行ったりします。スタートアップ・上場企業にかかわらず、〝法務機能の強化〟を目指して提案を行う点が、我々のインハウスサービスの強みです」
ある大手商社は、同事務所のインハウスサービスを継続的に活用している。この対応は、立川弁護士を含む3名体制で臨んでいる。
「事業部ごとに法務担当がいるのが商社特有ですが、我々に『その法務担当と同様のサポートをしてほしい』というご要望でした。担当事業部からの法務相談は全て担当者が一気通貫で行うため、我々自身が〝ジェネラリスト〟であることが求められます。また、基本的にクロスボーダー対応ゆえ、英語力は必須。加えて、取引先は世界各国となり、現地法やリーガルの論点の調査、現地法律事務所との協働作業など、非定型的な対応も必要となります。様々な関係者を巻き込みながらプロジェクトを前に進めていくことは、単純なリーガルスキルだけではなく、ビジネスパーソンとしてのスキルセットが求められる、非常にチャレンジングでやりがいのある仕事です」