Vol.24
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「会社が好き」という社風が昔からある。「だから社員が会仕の変化に関心を持っている。仕事が多岐にわたり大変だけれども、頑張ろうと思えるのは、その文化があるから」と三島法務部長

「会社が好き」という社風が昔からある。「だから社員が会仕の変化に関心を持っている。仕事が多岐にわたり大変だけれども、頑張ろうと思えるのは、その文化があるから」と三島法務部長

THE LEGAL DEPARTMENT

#20

富士フイルム株式会社 法務部

「事業部密着」をベースに新事業をサポート。会社に適応した有資格者にアプローチ

信頼感を高めた「フィルム紛争」

松田聖子さんと小泉今日子さんを共演させたCMで話題の化粧品「アスタリフト」が象徴するように、同社の業容はかつての「写真フィルムメーカー」から大きく進化し、消費者向けにデジカメ、化粧品、ビジネス関連で医療、印刷用の機器や材料、液晶用部材などを多角的に展開している。富士ゼロックスなども傘下に置く「富士フイルムホールディングス」としての売上高は2兆2171億円、従業員は約7万人で、富士フイルム法務部ではその約半分の規模に当たる富士フイルムの事業に関する業務を、主に担当している。

法務の陣容は、富士ゼロックスなども傘下に置く「富士フイルムホールディングス」のコーポレートリーガル担当4名を含め18名。「グローバル展開をさらに推し進めている会社の事業内容から見て、少ないですね。拡充していく必要があります」と、三島一弥法務部長は話す。ちなみに三島氏は、「ホールディングス」の経営企画部法務グループ長も兼務している。

法務部は、BtoCおよびBtoB関連事業をそれぞれ担当する二つのグループからなる。ただし「案件によっては、〝垣根〞を越えてチームを組むなど、柔軟な組織にしている」そうだ。

「〝事業部と近くある〞のが、当社法務部の最大の特徴。口幅ったい言い方ですが、現場から頼りにされ、リスペクトもされていると自負しています。だから重大な問題が発生した場合は、いち早くこちらに情報が伝わり、具体的なアドバイスができる」

同社法務部の信頼感を高めた事件が、1995年に発生した「日米フィルム紛争」だ。米コダックが富士フイルムの「排他的市場慣行」を問題にして、WTO(世界貿易機関)にまで持ち込まれたこの問題は、結局日本側の全面勝利に終わる。

法務部は、日本企業でいち早く本格的に立ち上げたホームページで反論を展開するなど、「戦い」の中核的な役割を担った。「あの時の経験はいろいろな意味で〝資産〞になった」と、三島氏は話す。

富士フイルム株式会社 法務部
「富士フイルムが?」と驚かれた「アスタリフト」シリーズは、今や女性に大人気の化粧品。高級コンパクトデジタルカメラFUJIFILM X100など話題作も目白押し

欲しいのは「資格」ではなく「適性」

富士フイルム株式会社 法務部
左 法務部 長谷川 碧美さん(弁護士)

「事業に近くある法務部」を実感している一人が、今年2月に入社した、初の弁護士有資格者である長谷川碧美氏だ。2年弱、企業法務専門の法律事務所で働いたのちの転身。

「理由の一つは、子育てです。法律事務所では、クライアントの要望に、最優先で対応しなければなりません。帰宅後、子育てに専念できる今の環境のほうが、私のライフスタイルにマッチしました。仕事に関していうと、事務所で接するのは企業の法務部の方。ある程度整理された事実を相談されるので、一見するとわかりやすいですが、言い方を変えると事実にバイアスがかかっていて本当の問題が見えにくいことがあるのです。〝他社〞のことだから根掘り葉掘りは聞きにくいし。でも、企業の中ではそれはない。丁寧に聞いていけば本当の問題がわかってきます。事務所にいた頃に比べて、相手の疑問によりフィットしたアドバイスができるようになったと感じています」

有資格者を採用する意義と課題を、三島氏はこう語る。

「かつての司法試験はずっとハードルが高かったから、法学部卒でもチャレンジするのはごくわずかで、大半は普通に就職していました。しかしロースクールができ、資格の門戸が広がったことによって、そこに企業法務に適性を持つ人が多く集まる環境ができたのです。〝弁護士だから〞ではなく、〝適性があるから〞こそ有資格者にアプローチしたい。一方で、双方の希望条件をすり合わせるのがそう簡単な作業ではないことも認識しています。弁護士事務所に勤務するのに比べ年収は下がるかもしれない。しかし仕事の面白さやビジネスパーソンとしてのキャリアアップの将来性、ビッグビジネスならではの安定した勤務環境など、金銭面に表れないベネフィットをどれだけ理解してもらえるかが大事になりますね」

会社の変化を支える法務部に

今後も予想される新事業の展開。法務部はどんなスタンスで臨むのか。

「やってみないとわからないことは多々あるでしょう。でも、事業が円滑に進むよう法的な問題の解決に取り組むという基本的な役割は、これからどんな新分野に進出しても変わらないはず。あえて言えば、出てきた課題をこなす単なる機能集団にとどまりたくはない。常に会社がどちらを向いているのか、何をやろうとしているのかに関心を払い、事業の発展を我々の専門知識で支えていくのだという意識を強く持った、法務部であり続けたいですね」