ところで、同社法務部には弁護士資格保有者が2人、法科大学院の卒業生が2人いる。
「〝専門家〞を採用した最大の理由は、基礎的な法務知識があり教育にかける時間やコストを削減できること。普通、学部卒の人を一応任せられるレベルにするには、10年かかります」
では、採用される側の意識はどうだったのか? 2009年入社で、弁護士資格を持つ齋藤美香さん(事業法務室1グループ主任)は、一般企業への入社を選んだ動機をこう話す。
「法科大学院で企業法務を学んだのをきっかけに、一般民事や刑事ではなく企業法務関係で仕事がしたいという気持ちが芽生えました。法律事務所に所属して企業法務に携わるという選択肢もあるのですが、私の場合はビジネスにより近い現場で、知識を生かして働いてみたいという思いが強かった」
実際の仕事も、その気持ちを叶えるに足るものだったようだ。
「法務部の〝改革〞の成果もあって、ビジネスの最初から『どう進めたらいいか』という相談が増えている。外部の弁護士と違って、ある案件を担当したら、社員として最後まで携わることになります。法的リスクが浮上すれば、その都度アドバイスして営業サイドと一緒にビジネスを進めていく。そういう深い仕事ができるのは、企業に入ったからこそだと思いますね」
山下氏は、「我々が欲しいのは知識ですから、資格を持つか否かにはこだわりませんが、今後も〝専門家〞の採用を進めたい。将来的には、法務のメンバーの大半が弁護士か法科大学院卒ということになるかもしれません」と言う。
「とにかくIT業界をめぐる変化は激しく、しかもその変化に前例というものがないのです。それに十分対応できるよう、『業界で最先端の法務部』を目指したいですね」