そんな同社法務局には、現在9名のスタッフが在籍。今年から会社法関連の法務とは分離し、法務局は現場に対する法務サービスに特化している。1名いる弁理士が商標を中心とした知的財産権を担当し、他のメンバーは適宜チームを組んで営業の取引法務を担うという体制だ。
デリケートな契約を結ぶ際にも、正しいオペレーションを行うためにも、「現場とのコミュニケーションを良好に保って、お互いの理解を高め、協力していく姿勢が不可欠」だと久保田氏は言う。この点については、「法務が現場に近い関係性が持てているというか、頻繁かつ気軽に相談を持ちかけてきてくれます。特に営業とはかなり密接な関係が築けていると思いますよ」というのが、佐藤氏の評価だ。
むろん〝コミュニケーション〞の中で、強くブレーキを踏むこともある。久保田氏は言う。
「いうまでもなく我々の仕事はクライアントのイメージアップを図ることです。万が一、世の中に向けて露出している広告に契約の不備などの問題が起きたらどうなるか。クライアントのダメージとなってしまうこともあります。法務としては、何よりも投資のマイナス効果を生じさせるような事態を、避けなければなりません。〝取引の品質管理〞をしっかりやろうということを、現場にも繰り返し話しています」
人材育成については「ベテランと組んで、できるだけ多くの案件を経験するOJT(オンザジョブトレーニング)が基本。同時に、意識的に外部の優秀な弁護士と一緒に仕事をしてもらい、法務パーソンとしてのスキルアップを図っている」そうだ。
ところで同社は昨年、初めて法科大学院修了者を対象にした募集を行い2名が合格、うち1名が法務局配属となった。
「昔に比べて企業が何を求めているのかを理解した若者が確実に増えました。ロースクール修了生については、今年も採用を目指したい」と久保田氏。
「企業法務にとって大事なのは〝現場感覚〞です。みんな何らかの問題を抱えているからこそ、法務に相談にやってきますし、答えを求められるのだと思います。しっかり解決していい契約が結べた時は、大いに感謝もされますし、我々がやりがいを感じる瞬間でもあります。その思いを共有できる、若い人材がぜひとも欲しいですね」