2021年8月に、創立50周年を迎えたパーク24株式会社。無人管理の時間貸駐車場や、カーシェアリングサービスのフロンティアとして、業界をけん引し続けてきた。同社は持株会社として、国内外のグループ会社の統括、経営企画・管理を担う。社内に独立した部として、グループ法務部(現グループ法務・知的財産部)が設立されたのは約3年前。部長の佐藤雅樹氏に、設立背景をうかがった。
「当社はこの10年ほどで事業展開を拡大させてきました。顧客数自体の増加、海外進出など事業形態も多様化し、法的な課題対応が急務となったことで、法務体制が整えられました」
業務範囲は、コーポレートガバナンス体制の構築・運営、株主総会の事務局、知的財産、国内グループ会社の契約審査・法律相談、営業事案対応など。海外のグループ会社は台湾やオーストラリア、ニュージーランド、シンガポールマレーシア、英国にあり、重要係争案件の管理、レピュテーションリスクのある案件が生じた場合は、即連携して対応。日々の業務は、細かな担当分けをせず、契約、労務、個人情報保護、商事法務、海外法務、知財など幅広い分野に対して、所属メンバー13名が一丸となって臨む。そんな同部の特徴は、事業部門など現場との距離が近く、新規ビジネスの相談をはじめとして、アイデアレベルの相談も日常的に寄せられること。同部の島野友行氏に仕事内容をうかがった。
「例えば、ゲートやロック板を設置せず、出入り口に設置したカメラで車両ナンバーを記録して管理するカメラ式駐車場の導入、駐車料金支払い時のスマートフォンアプリを活用したキャッシュレス決済の対応など、DX化の進展もあり、新たなアプローチで顧客利便性が追求できるようになりました。事業部からは『こんなサービスできないか?』といった相談が頻繁にあります。漠然とした相談の時は、やってみたいことを一緒に洗い出し、整理して、法的な検討を行います。こうした業務の進め方は、現場との距離が近い、当社ならではのスタイルだと思います」
島野氏が例にあげたBtoC取引における新規事業には、法務として様々な検討課題が生じる。
「カメラ式駐車場の場合、撮影されるナンバープレート情報は個人情報にはあたらないけれど、プライバシーの観点ではどうか――といったことを考慮して、利用規約に落とし込みます。また、精算方法が多様化するなかで、その方法が資金決済法にあたるのか割賦販売法にあたるのか、その場合の当社のポジションはどこに置くのかなども検討課題となる。そうした法的問題点を、事業部など他部門のメンバーと議論し、解消していくプロセスが楽しいですね。企画・営業事案の初期段階からコミットできることが、仕事の大きなやりがいになっています」
ビジネスを現場とともに推進する法務としては、“現場を知る”ことが非常に重要だ。
「部長の発案で、私や当部のメンバー数名で、カーシェアリングサービス・レンタカーサービスの車両の保守管理業務、駐車場精算機の現金回収業務などを実際に体験・視察する現場実習もしました。そのようなかたちで、私たちからも現場とのコミュニケーション機会を増やしています」(島野氏)