Vol.27
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「メンバーの中から毎年1名は海外留学に出ています。1年目はロースクールで、2年目は法律事務所で働き、グローバルビジネスを学びます」と坂下昭宏法務部担当部長(後列右から3人目)

「メンバーの中から毎年1名は海外留学に出ています。1年目はロースクールで、2年目は法律事務所で働き、グローバルビジネスを学びます」と坂下昭宏法務部担当部長(後列右から3人目)

THE LEGAL DEPARTMENT

#26

株式会社NTTドコモ 法務部

日本の情報通信の未来を「開かれた組織」を武器に事業部とともに切り拓く“知恵袋”

法律事務所とも人材を交流

株式会社NTTドコモ 法務部
2011年にトップリーグに昇格したNTTドコモラグビー部「レッドハリケーンズ」

「法務部は専門職集団という見られ方もあって、組織文化的に〝閉じた〞状態になりやすい。メンバーが外に開いたマインドを維持できるような制度設計には、常に心を砕いてきました」と、中村豊法務部長が語るとおり、同社法務部はユニークかつ大胆な取り組みを実行している。

一つは、大手法律事務所との「人材交流」。同社の法務部員は総勢38名だが、社員以外に3名の弁護士がいる。うち2名は法律事務所からの出向で、ラインに入って仕事をしているのだ。

「法律事務所の業務は、法律的にどこまで完成度を高めるかという意味での厳しさが違う。そんな意識を持った弁護士と切磋琢磨することで、メンバーにより法的感度を研ぎ澄ましてもらいたいというのが狙いです」

「交換」で、同社からも若手を事務所に送り、経験を積ませる。「法律事務所側からすると、クライアントの意思決定の過程が見えにくい。双方にとってメリットは大きい」取り組みである。

社内ローテーションも活発だ。

「部員の3分の1ほどを、意識的に事業部門から採っています。期待するのは、法務の経験を持ち帰り、それぞれの部門のリーガルマインドを高めるアンカー役となること。『法務部道場論』と名付けているのですが、人材を育て会社全体のリーガルマインドを向上させるのも、我々の重要なミッションなのです」

法務部の組織は、「共通系・法人営業部門」「ネットワーク・金融部門」など、5グループから構成されている。

「実は、人事、総務などにかかわる共通系と法人営業が一緒である必然性は、ほとんどありません。グルーピングのコンセプトは、各ラインの負荷、面白さが常に均等になること。だからグループの枠組みそのものを、結構変えています。わざわざそんなことをするのは、いつも新鮮な気持ちで仕事に向かってほしい、そして全員にゼネラリストになってもらいたいから」

常に生まれる「新たな法律問題」

株式会社NTTドコモ 法務部
前例のないビジネスルールをつくるには、若いメンバーの柔軟な思考が求められる

そうした外に向かう意識の涵養は、情報通信産業の先頭を走り続けている同社の法務部にとって、必須の要素だったようだ。

「携帯にクレジットカード機能を搭載するとか、位置情報で子供の安全を確認できるとか、当社は時代を先取りする新しいサービスを次々に開発してきました。でも、世の中にないサービスを提供するためには、世の中にない制度や法律が必要になることが少なくありません」

「例えば……」と、坂下昭宏法務部担当部長はいう。

「携帯電話の基地局エリアごとの台数をお客様の属性別に数えることで人口分布を推計できます。この「モバイル空間統計」は、災害時の帰宅困難者の分析などに有効な情報になり得るのです。技術的にはOK。でもプライバシー侵害などの問題はないのか?専門家の方々と研究を重ね、個人が特定できずプライバシーなどの問題が生じない仕組み、ルールをまとめました。最終的には、統計利用について総務省のガイドラインに明記してもらうこともでき、実用化。法務部はサービス実現の過程に主体的にかかわっています」

革新的なサービスの開発には法的問題のクリアが不可避。

「そのあたりは事業部も十分認識していて、設計の段階から法務部を入れて議論していこうという意識が根づいています。我々の存在価値は、そこで有意義なアドバイスができること。〝下りてくる〞仕事を淡々とこなすという姿勢では、それは無理なのです」と、中村氏は話す。

株式会社NTTドコモ 法務部
スマートフォンやタブレット端末などの新機種の発売が目白押し。新しい機能とともに新しいルールも増えていく

部のミッションステートメントは、「ドコモの知恵袋」になること。そのためにプロジェクトチームの一員として現場で頑張ると同時に、週1回のラインミーティングなどに教訓を持ち寄って、お互いに知恵の交流ができるよう心がけている。

90年代末の業容拡大に伴い、法務の人員増強を急いだこともあり、3分の1は中途採用者が占める。だがここ数年は法学部新卒およびロースクール卒業生に、採用の照準を合わせている。

「事業部の人間と一緒になって物事を考え、そこに自分のスペシャリティを織り込んでいける。あえていうと〝清濁併せ呑める〞人材が理想です(笑)」

同社法務部の「柔軟な組織」は、まだ発展途上にある。

「今後も有資格者が多く生まれ、彼らが企業法務で働く機会は増えるはず。法律事務所と法務部の垣根が低くなり、欧米のように有資格者が活発に往来するようになるかもしれない。そうした方向性をにらんだ組織制度のあり方も、重要な研究課題だと感じています」