Vol.95
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法務部は6名の陣容。日本法の弁護士資格者は2名(左から2人目の本間氏・74期。右端の鈴木氏・72期)。メンバー全員、「面接時から、西澤さんの“パワフルさ”に惹かれました」と笑顔で話してくれた

法務部は6名の陣容。日本法の弁護士資格者は2名(左から2人目の本間氏・74期。右端の鈴木氏・72期)。メンバー全員、「面接時から、西澤さんの“パワフルさ”に惹かれました」と笑顔で話してくれた

THE LEGAL DEPARTMENT

#172

GMOフィナンシャルゲート株式会社 コーポレートサポート本部 法務部

経営の構造を見抜き、仕組みを創り、判断をデザインできる“経営調査官”に!

独自視点で育む法務人材のスキル

GMOフィナンシャルゲート株式会社は、実店舗での対面決済に加え、無人機や自動精算機などの無人化IoT環境にも対応したキャッシュレス決済のインフラ提供事業を展開。クレジットカード、デビットカード、電子マネーなど各種決済手段対応のマルチ決済端末と決済処理システムを提供し、〝社会のキャッシュレス化〟を推進する。環境変化にスピーディーに対応する事業を支えるため、法務部は2025年にビジネス法務課とコーポレート法務課の2課体制へ再編。法務部長の西澤朋晃氏に、背景を聞いた。

「当部では、『契約上のリスクを指摘するにとどまらず、ビジネスを前に進める法務でありたい』という強い思いがあります。そこで、契約場面で事業部門と『どうすれば実現できるか』をともに考え、課題解決を主として担当する、ビジネス法務課を新設しました。従来の商事法務と、資本政策・組織再編や稟議制度、ストックオプションの管理などは、コーポレート法務課が担当しています」

2課に分けた目的は、「業務責任をどこが持つかを明確にしたかったに過ぎない」と、西澤氏。

「各課の主業務は定めますが、実は業務の線引きを明確にしていません。例えば、ビジネス法務課に所属していても、経営層に近いところで仕事がしたいと本人が言えば、コーポレート法務課の業務に携わることができます。各自がどのような仕事をして、どのようなキャリアを描いていきたいかという〝キャリアの選択肢〟を広げることのほうを優先しています」

同部のメンバーは、数年先を見据えた自身のキャリアプランニングを行っていくにあたり、西澤氏が考案した「三次元スキルマップ」を活用している。

「法務部の業務は、非常に多岐にわたります。そこで、〝企業法務にとって必要なスキル〟を洗い出し、3つの軸を用いて整理した、三次元スキルマップを作成しました。1つ目の縦軸には、論理的思考力、先を読む想像力、ビジネス理解力など20項目の企業法務に必要なスキル項目を設定。2つ目の横軸には、キャリアステップ(ジュニア、ミドル、シニア、エグゼクティブ)を設定。それぞれのポジションで必要となる能力を定義し、社内でのキャリアステップを可視化しました。3つ目は奥行きの軸として、壁打ち、ドラフティング、議事録作成などの業務内容を設定。メンバーはこの3つの軸で、スキル・成長感を客観的かつ論理的に捉えられる仕事を日々行っています」

西澤氏は、「例えば、『論理的思考力というスキルは〝奥行きの軸〟の、どの業務をあてはめたら伸ばせるか』を、各自で考え実践してもらう。答えを覚えるのではなく、答えへの〝たどり着き方〟を身に着けてほしいと考え、〝思考プロセス型の育成方法〟を編み出しました。まず自分で考えて、実行することを大切にしています」と語る。

「私自身は〝一人法務〟でのスタートでしたから、どのようなキャリアが正解か教えてもらえる環境ではなく、『キャリアをどう考えているのか?』と他者に問われて答えに窮したこともよくありました。だからこそ、『法務人材のキャリアステップを可視化したい』と思ったのが、この三次元スキルマップをつくった目的です」

全体最適に向けて法務の枠を超えていく

ビジネス法務課の課長である鈴木遼氏と、コーポレート法務課のリーダーである本間星氏は、ともに法律事務所の出身。鈴木氏に、仕事のやりがいについて聞いた。

「企業法務の醍醐味は、各プロジェクトの〝種〟の段階からかかわれることです。西澤曰く、『当社の事業が属する業界は、ニッチでクローズドな側面があり、〝暗黙の了解〟で契約が成り立つこともある。契約書のひな形が存在しない場合も多く、サービスの構築段階から法務が関与する』と。実際、そのとおりで、プロジェクトメンバーの一員として、営業やシステム、社内の運用担当者などにヒアリングしながら、ゼロからスキーム設計や契約内容の検討を行い、当事者としてプロジェクトを前に進めています。契約締結後も、その契約が継続的に適正に運用されるよう伴走する――そうしたプロジェクト型の案件が常時複数動いており、多様な部門との協働が多いことも、当部の特徴だと思います」

同社では23年に、様々な決済手段に対応可能なオールインワン端末を日本郵便の全直営郵便局へ導入した。同端末による決済データ処理や各決済事業社へのデータ伝送を担うネットワーク機能は、大手カード会社等と共同開発した次世代決済プラットフォーム上で稼働する。こうした〝裏側の仕組みづくり〟にかかわることが、同社法務の難しさでもある。

「司法の現場ではあまり取り上げられないような分野も、私たちの業務では重要になります。各種個別法・業界慣習・グレーゾーンなどは、その一例。そうした領域については、まず丁寧に調べたうえで、どこまでが自分たちの判断で進められるのか、どこから専門家の意見を取り入れるかの見極めを慎重に行います。また〝ルールがまだない領域〟の仕事が多いため、入社当時は社内のベテラン営業職のもとへ日参し、業界慣習などを教えてもらいました。この行動を、現場情報のキャッチアップに欠かせない〝ルート営業〟と呼んでいます」(鈴木氏)

本間氏には、〝現場〟とどのようなかかわり方をするかを聞いた。

「今手がけているのは、社内で使用している加盟店向け申込書の書式整理です。元々、事業立ち上げ時に作成したものを使い続けていましたが、事業の成長に伴って内容が業務実態に合わなくなっていました。さらに、各部門が独自に改変した結果、複数のバージョンが存在し、全体像を把握できない状況になっていたのです。そこで、申込書の書式を全社的に整理し、業務効率化も鑑み、DX推進を図る全社プロジェクトとして主導しています。社内の様々な部署で〝現場の課題〟をヒアリングし、ミーティングを重ねた結果、営業部門に通い詰め過ぎて、営業の入社したてのメンバーからは『営業の人かと思っていました』と言われたほど(笑)。そのようなコミュニケーションを通じて、全体像を明らかにし、プロジェクトを実現していく過程にやりがいを感じています。当社法務部の仕事は幅広く、業務を通じて〝できること〟が増え、知見も広がります。確実に自己成長感が得られる職場です」

「法務部メンバーは全員、論理的で〝構造を見て課題を把握する力〟が非常に伸びていると思います。本来、法務の役割は、『ここを直せばリスクが減る』など、個別問題・リスクの修正が主ですが、構造全体を見渡せば、『もっと全体最適を図れるのではないか』という視点が出てきます。その視座の高さと視野の広さが、会社全体の力を高めることにもつながります。そうした発想から、今は法務の枠を超えて、全社的な業務プロセス改善やDXにも踏み込んでいるわけです。現場の最前線と密につながり、実態を把握したうえで課題解決していく我々は、外部コンサルタント以上の価値があると自負しています」(西澤氏)

決済手段の多様化が急速に進むなか、安心・安全な決済サービスの提供が使命。法務部は、法令およびクレジット業界内のデータや個人情報の取り扱い(Pマーク)も主導する

経営に資する法務となるために

法務部のクレドは、「①常に倫理的かつ合理的であること。②権力に迎合しない。③絶えず思考し続ける専門職である。④三手先を読んで初手を決める。⑤我々の〝学び〟に終わりはない」の5つ。

「これらを実践するためのベースは、各自が頭を使って考え、行動すること。つまり〝自走する組織〟。そのような〝文化〟を設計し、継承していけるメンバーを集めています」と、西澤氏。法務部のあり方について、こう話す。

「法務部は、〝構造を見抜き、仕組みを創り、判断をデザインできる存在〟であるべきと考えます。経営判断を適切に行うには、前提となる資料や環境が整っていなければなりません。それが欠けると意思決定が機能せず、株主代表訴訟に発展することもあります。私たちは法的にも〝経営判断の原則〟を習得済みで、どのような判断が合理的とされるかを十分理解しています。その〝将来の判断基準〟を踏まえて〝今〟を設計することで、後に問題が生じても防御できる体制を築いています。実はそうした仕組みはすでに法務部のなかにあります。私はこの役割を〝経営調査官〟と呼んでいます。最高裁の裁判官を支える最高裁調査官のように、経営が結論を導くためのルートを整備する、いわば〝企業の最高調査官〟が、私たち法務部なのです」

最後に、西澤氏に目標を聞いた。

「企業法務は、法務という専門性を持ったビジネスパーソン。NOと牽制する伝家の宝刀を持ちつつも、法的知見を駆使した交通整理力を発揮し、スキームも構築する。そんなビジネスの推進に伴走する経営法務のモデルケースとして、先陣を切っていきたい。これを一緒に体現できるメンバーが集い、気付けば全社員の1割を占めていたとなれば面白いなと思います」