加工食品事業と低温物流事業を中心とし、水産・畜産事業、バイオサイエンス事業などを国内外で展開するニチレイグループ。そのグループ全体の戦略を担う持株会社が、株式会社ニチレイである。同社法務部の業務について、法務部長の片渕哲郎氏にうかがった。
「当部では、①ガバナンス、②コンプライアンス、③M&A・グループ再編と、業務を3つに大別しています。①は株主総会・取締役会・経営会議といった会議体の運営、グループガバナンスの規程作成などで、昨年からは海外子会社のガバナンスの強化にも力を入れています。②は一般的な契約書審査、法律相談、事件・事故対応、不正調査など。①の強化事項と同様、海外コンプライアンス分科会が新たに設置されたことにより、当部がその事務局を担っています。③は国内外問わず、M&Aに際してのデューデリジェンス、契約交渉、PMI対応、およびイグジット対応を各事業会社(子会社)と連携して対応しています。グループは現在、10カ国以上で事業を展開しています。例えば低温物流事業(ニチレイロジグループ)は欧州各国・英国・中国・タイ・マレーシアに進出しており、その競争法遵守や贈収賄防止、GDPR対応などにも尽力しています」
といったように同部は、各事業会社の法務機能との連携、および法務機能が十分でない事業会社には法務メンバーを派遣するなどして、グループ全体の法務を統括している。業務は3つに大別されているが、中心となる各業務のリーダー以外は、あえて流動的にメンバー編成をするのだという。
「法務部が部として独立したのは2013年と、比較的近年です。立ち上げ時、私も含めて加工食品事業や低温物流事業など“現場”を長く経験した社員を中心に配属されました。企業法務において、“現場を知っていること”はとても重要です。その後、有資格者も増え、全メンバーがそれぞれの知見を共有しながら協働できるよう、メンバーの育成・組織力の強化を目的に、チーム分け・担当分けを明確にせず、各人を入れ替えながら事案に対応しています」
同部の業務は“現場”との協働が密である。例えば18年、インドのスタートアップ企業に出資した際は、そのために新設された事業開発グループ(当時、経営企画部直下)のメンバーを現地でサポートするため、契約交渉にも全面的にかかわった。また同年、マレーシアの低温物流事業会社に出資した際も、ニチレイロジグループ本社事業管理部のマネジャーが現地に赴き、先方との細かな調整、クロージングの立ち合いなどに同席した。そうした仕事を経験したメンバーは、「事業の芽の部分から相談してもらえ、“ディールダン”まで支えられる。臨場感あふれるビジネスシーンにかかわれることが大きなやりがい」と、一様に語るそうだ。